2013 Fiscal Year Annual Research Report
江戸前中期における本草学知の動態的研究 - 日本的博物誌形成史の再検討
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12J02571
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
太田 由佳 明治大学, 研究・知財戦略機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | 博物学 / 自然史 / 稲若水 / 庶物類纂 / 丹羽正伯 / 薬種国産化 / 本草学 |
Research Abstract |
本年度は前年度に引き続き、(1)対象資料の網羅的書誌調査、(2)稲若水・丹羽正伯編『庶物類纂』の読解とその史的意義の検討、という二つの側面から研究を行った。前者では、国立国会図書館、国立公文書館、内藤記念くすり博物館、西尾市岩瀬文庫、名古屋市鶴舞中央図書館、金沢市立玉川図書館を訪れて調査を行った。これに各機関が提供する電子画像での調査・閲覧をあわせれば、本研究が対象とする〈寛文~安永間に成された本草博物誌資料〉の把握と通覧は、おおむね完了したといえる。得られたデータの整理はなお継続中である。後者では、前年度にすでに着想を得ていた稲若水本草学の特色と『庶物類纂』に関する新見解をより明確なものとするべく、関連史資料の精読と追加調査を行った。これにより、若水が加賀藩へ出仕し、藩主前田綱紀の支援のもとで『庶物類纂』の編集に取り組むようになった経緯を明らかにすると共に、その内容的特色が次の3点に集約されるものであることを確認した。(1)『庶物類纂』1000巻は、国内に産出し、かつ正確な漢名を持つと稲若水が判断した自然物を集め、それに関する漢籍記事を集載したものである。(2)漢名が明らかであっても国内に産しない物や、あるいは逆に国内に産しても漢名を持たない物は、本書から除かれている。(3)〈国産品を漢名で記す〉というこの編集方針は、若水の没後に編集の継続と増補とを担った丹羽正伯にも継承され、その結果、特に増補54巻は将軍吉宗が主導した薬種国産化政策を色濃く反映したものとなっている。『庶物類纂』に関するこれらの成果はすでに論文としてまとめており、次年度での投稿・公表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料調査とデータ整理に時間をとられ、成果を活字化するまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで2年間にわたって採取・蓄積してきた書誌データを整理・分析し、本研究が主題とする日本的博物誌の形成過程を具体的に描出することをめざす。資料によっては追加調査が必要となるであろうが、大部分の研究時間をこれまでに得たデータ・文献の分析にあてる。
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Research Products
(1 results)