2012 Fiscal Year Annual Research Report
構造生物学に基づくマウスフェロモンESP1の受容体認識機構の解明
Project/Area Number |
12J02683
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
平金 真 熊本大学, 大学院・薬学教育部, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | フェロモン / ESP / G蛋白質共役型受容体 |
Research Abstract |
フェロモンは、ある個体が発し、同種の別個体に受け取られて特定の行動や生理的変化を促す物質である。共同研究者の東原らは、オスマウスの涙よりメスマウスの鋤鼻神経系を活性化する新規の不揮発性ペプチドを同定し、ESP1と命名した。また、ESP1受容体がGタンパク質共役型受容体(GPCR)に属するV2Rp5であることも明らかにした。さらに、我々はESP1がメスマウスの性行動を促進することを解明した。ESP1はリガンドと受容体、そして機能までが明らかになっている哺乳類における初めてのペプチド性フェロモンである。しかしながら、V2Rp5のESP1認識機構やESP1刺激による脳内のシグナル伝達機構などは不明な部分が多い。 本研究は、構造生物学的手法を用いてESP1-V2Rp5問の特異的な相互作用機構と受容体の構造変化が引き起こすシグナル伝達機構を解明することを目的とする。また、ESP1の刺激による脳内の活性化部位を明らかにし、フェロモン作用を引き起こす脳内シグナリングを明らかにする。 24年度は、構造解析を行うために十分なタンパク質量を得るため、V2Rp5の長さの異なるコンストラクトを作製した。小麦胚芽無細胞発現系で発現を行い、発現量が最も多いコンストラクトを決定した。次に、ESP1がV2Rp5細胞外領域のどの部分で受容されるかを明らかにするため、V2Rp5のVFTM領域のみのコンストラクトを作製し、結合能の解析を行った。その結果、ESP1はV2Rp5のVFTM領域に結合することが明らかとなった。これらの成果は、J.Biol.Chemに掲載される予定である。また、今回、MRIを用いてESP1刺激による脳の活性化を観測する系の構築に取り組んだ。今後、測定法を最適化し、ESP1による脳の活性化部位の観測を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造解析を行うためにV2Rp5の発現量の向上に取り組み、大量調製法の確立に成功した。また、ESP1が結合するV2Rp5の領域を特定した。年次計画の通りに、目標を達成していることから、順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ESP1とV2Rp5の相互作用メカニズムを解明するため、V2Rp5のESP1結合部位をアミノ酸レベルで同定する必要がある。現在、V2Rp5の変異体を用いた解析を進めている。また、ESP1がV2Rp5に結合しフェロモン作用を起こすまでの脳内シグナリングは、未だ不明な部分が多い。MRIを使用しESP1の刺激による脳内の活性化を測定することで非侵襲的にシグナリングを解明できる可能性がある。現在、測定系の構築を行っており、今後、ESP1刺激による脳内の活性化を観察する予定である。
|