2012 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザ誘起コヒーレントプラズモン遠方場によるナノプロセシング
Project/Area Number |
12J02684
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小原 豪 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フェムト秒レーザ / ミー散乱 / 表面プラズモン / LIPSS / LSFL / HSFL |
Research Abstract |
平成24年度はフェムト秒レーザ誘起表面微細周期構造の生成物理の解明を行った。鏡面研磨をおこなったワイドバンドギャップ半導体であるn型4H-Sicウエハ(バンドギャップ:3.2eV)を、フェムト秒レーザパルス(150fs,800nm)を多重パルス照射しナノアブレーション加工した。材料基板に存在する構造欠陥由来の、周期が200nmのリップルナノ構造が得られた。このリップルの周期はHSFL(High Spatial Frequency LIPSS)であった。この局所的なHSFLはレーザパルスを照射することに49nm/パルスのアブレーションレートで照射レーザの偏光方向に垂直方向に成長することがわかった。 フェムト秒レーザのマルチパルス加工において、レーザ加工閾値は照射パルス数によって低減する。これはインキュベーション効果で、レーザパルス照射で生成される欠陥の光吸収とそれによるレーザ光電界増強によってレーザ加工閾値が減少する。 また、レーザフルエンスの変化に伴う材料基板の光学定数の変化をDrude modelで記述し、3DFDTD法を用いて基板内の電磁界計算をおこなった結果、4H・SiC内の伝導電子密度が低い状態において、欠陥由来のミー散乱光と入射レーザ光との光干渉によってHSFLは、照射パルスごとに成長していくことがわかった。生成過程が未解明であったHSFLの成長物理を、実験的・理論的に解析したことは学術的に意義がある。このHSFLは、回折限界を大幅に超えるナノスケールの周期構造である。ドライプロセスであるナノアブレーション加工でHSFLが作製できるため、新しいナノ加工技術として大きな可能性を備えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フェムト秒レーザ誘起表面微細周期構造(波長1屈折率の空間周波数をもつ構造であるLSFLとHSFLの生成物理を実験的、理論的に解明することができた。今後はLSFL,HSFLの散乱の種である誘電体微細構造(構造欠陥等)を制御することで、LSFLのみならずHSFLの構造制御の可能性を拓くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
基板表面の構造欠陥によるミー散乱光と入射光との干渉によってHSFLが生成することがわかった。この構造欠陥は基板表面にランダムに存在するため最終的に生成されるHSFLやLSFLは歪みを持ってしまう。今後は基板表面に存在する構造欠陥を制御することで、精密な周期を持つLSFL,HSFLを作製する。表面構造を付与した基板(テンプレート)を用いて、世界で現在注目さ太陽電池表面の高性能化、LED,SERS基板などの高性能化を行う。
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