2012 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツの有価証券論の経済学的継受における近代的無記名証券のユダヤ法起源説の影響
Project/Area Number |
12J02695
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
恒木 健太郎 専修大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 譲渡 / 有価証券論 / ゾンバルト / サヴィニー / 商人=パラサイト / ブレンターノ / 反ユダヤ主義 / ユダヤ法 |
Research Abstract |
本研究における研究実施状況については、以下の3点にまとめられる。 1有価証券論の経済学的継受におけるUebertragung概念の変換 ゾンバルトが参照していたサヴィニーの有価証券論との比較検討した結果、両者においてUebertragung概念の理解に違いのあることがわかった。具体的には、サヴィニーが紙の所有権の「譲渡」(VerauBerung)と債権者という地位の「移譲」(Uebertragung)を厳密に分けているのに対し、ゾンバルトは「譲渡」と「移譲」の両者を区別することなく<Uebertragung>を使用している。今回の概念の転轍は法学的有価証券論の経済学的継受の歴史を辿るうえでも注目すべき事実であると考えられる。 2<商人=パラサイト>説の是非をめぐる経済学史的論争と反ユダヤ主義との関係 大塚史学の基礎にある生産優位主義がマルクスの剰余価値学説にひそむ<商人=パラサイト>説に由来していることを明らかにした後、フランクフルト大学図書館で発見した雑誌資料より、ブレンターノとゾンバルトがこれに否定的であったことを明らかにした。理論上対立していた大塚とゾンバルトがともに反ユダヤ主義的言説へと傾斜したことを考えれば、この事実は何が<生産的>なのかを問う経済学と反ユダヤ主義との関係を解明するうえで重要な手がかり与えている。 3ユダヤ法論をめぐる諸文献の発掘 フランクフルト大学図書館に所蔵されているユダヤ関連文献コレクションのうち、非電子化書籍の2点を閲覧し、そのコピーをとらせていただいた。両者とも、ゾンバルトが自身のユダヤ法起源説を補強するうえで参考にしていた稀覯文献である。 Fassel, Hirsch Baer. Das mosaische-rabbinische Civilrecht, Wien, 1852. Kohler, Joseph. Darstellung des talmudischen Rechtes, in: Lazarus Goldschmidt(hrsg.), Dierechtswissenschaftliche Sektion des Babylonischen Talmuds,1.Band, Berlin, 107, S. 1195-1252.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の計画にあった「化体」説の経済学的継受と再構成にかんする研究が一昨年度からの継続で相当に進んだため。また、3年目に行う予定であったユダヤ市民法史研究にも着手することができた。さらに、経済学における〈商人=パラサイト〉説をめぐる論点の重要な発見を、日本との比較研究から行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に実行予定であったユダヤ法起源説をめぐる対立と商法学説史論の影響にかんする研究をすすめていくとともに、それとの関連で欠かすことのできない「譲渡」をめぐる概念史を、ローマ法継受との関係ですすめていく。 また、〈商人=パラサイト〉説の是非をめぐる論争にかんしては、ゾンバルトを熱烈に受容した反ユダヤ主義者との関係についても検討をすすめていく。さらに、本研究では計画外であったが、この〈商人=パラサイト〉説の受容については、学問的総合を目指した「戦後啓蒙」の社会科学にも影響がみられるため、その研究を並行して行うことが必要となっている。そして、本年もフランクフルト大学図書館に向かい、ユダヤ関連文献コレクションのなかにある非雷子化書籍の発掘に努める。
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Research Products
(3 results)