2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J02903
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高岡 正法 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経活動 / 認知的効用 / 不完全想起 / 直感的意思決定 / ヒューリスティクス / ヒューマン・エラー |
Research Abstract |
本研究では、神経活動に関するデータを基にした個人の認知作用に関する理論を構築し、認知作用の一部として認知的効用と呼ばれる概念を定義する。さらに、個人の認知作用に関する性質として、認知作用の状態依存性と不完全想起と呼ばれる2つの性質を明示化することで、効用のパラメータの不変性や情報の完全利用として従来の経済学理論の公準として想定されていた合理的個人の性質に関して一般化をする。この個人の認知作用に関する性質の一般化を、意思決定行動の目的関数となる認知的効用に反映させることで、ヒューリスティクスの影響を受けたり、ヒューマン・エラーを起こしたりするような、個人の直感的な意思決定行動に関する説明の基礎となる理論体系を構築する。 現在共著者とともに執筆中の論文、Striatal event-related activity reflects intrinsic discount rate in a multi-step reward taskにおいて、先行研究でのサルのマルチステップ課題をヒトfMRI用に改良した実験および経済アンケート実験を行った。2011年10月より開始し2013年2月まで総計21名の被験者に対するfMRIを用いた実験の結果から、脳活動に関して複数試行先の報酬も含めた割引価値に対応するTDと呼ばれる数値の表現が、線条体、内側前頭前野(いわゆるドーパミン系)、島皮質で見つかった。このことは先行研究におけるサルでの実験結果と整合性を持つ結果を得られた。さらに、経済アンケートの結果からTD関連領域の活動に、被験者の割引率の値によって有意に差があるということが示された。これらのことは、TD関連領域の活動を見れば割引率を推定することが可能であり、デコーディングへの応用の可能性を示す結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒ意思決定をする際に用いる価値表現と神経活動との間の関係を示すfMRI実験の結果から、サルの実験結果と同様の報酬割引に関する表現がヒトにおいても同様の部位において賦活していることが明らかになった。賦活した部位は主に認知作用に関係するとされている部位であり、認知的効用と神経活動との間の関係性が示されることを支持する結果を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
認知的効用の理論を構築するために、認知作用に関するさらなる分析をするために、意思決定時の視線のデータを集積するアイトラッカーを用いた実験を予定している。神経活動とは異なり、認知に関してより直接的な視線のデータを用いることで、効用と認知作用との関係性をモデル化するために必要な基礎づけを与えてくれると期待する。問題点としては、十分なデータの数を得るためにより効率的な実験計画を構築する必要がある。この点については、明確にすべき点を絞り、個人間の差異が生じにくい実験モデルを用いて実施する予定である。
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