2012 Fiscal Year Annual Research Report
サル一次視覚野におけるアセチルコリンの機能的役割の解明
Project/Area Number |
12J02908
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
相馬 祥吾 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 一次視覚野 / アセチルコリン / ゲイン調節 / 微小イオン泳動法 / 浸潤投与法 / 視覚刺激検出能 |
Research Abstract |
最近の認知症研究などから、ヒトの視覚認知機能が正常に働くためには、視覚皮質内のアセチルコリン(ACh)が必要不可欠であることが分かってきた。しかし、AChがどのように視覚情報処理に関与するのかはよく分かっていない。そこで申請者は、ヒトに近い視覚系を有するサルを用い、微小イオン泳動法によりAChを視覚皮質ニューロンに直接局所投与してその効果を検討したところ、多くのニューロンにおいて視覚応答を増大すること、また、その修飾作用は、ACh受容体サブタイプの中のムスカリン性受容体が重要な役割を果たしていることを見出した(Soma et al., 2012. Journal of Neurophysiology)。 しかし、覚醒動物においてAChによる反応ゲイン調節がどのような視知覚を引き起こすのかは未解明のままである。従って、覚醒動物に視覚刺激検出課題を実施し、コントロール条件下とACh投与条件下で、視覚刺激検出能が改善されるかどうか、また、その時の神経活動を記録することを最終目標として研究を行っている。本年度は、麻酔下のラットにおいてもサルと同様に、AChが反応ゲイン調節を行っていることを確認した(Soma et al., 2013.Scientific Reports)。また、これまで実施してきた微小イオン泳動法による局所投与ではAChが影響を及ぼす範囲が限定されると考え、V1におけるAChの影響範囲をより実際に近い状態に近づけるため、浸潤投与法によるAChの影響を検討した。AChを浸潤投与法によりV1の広域に作用させた場合も反応ゲイン調節が観察された。さらに、興味深いことに、機能分化したV1の6層構造において異なる修飾効果も観察され、高次視覚野へ出力する2/3層では余分な発火数を抑え、視覚刺激の位相情報だけを出力していることを確認した。この結果は、AChがV1に作用することにより視覚刺激の検出能を高めることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
麻酔下ラットにおいてもサルと同様のAChの修飾効果を確認できており、覚醒ラットにおいて視覚刺激検出課題を実施する新たな実験システムも構築済みである。今後は、覚醒ラットにおいて、AChの修飾効果を調べ、その結果をサル実験にフィードバックさせることで、最終目標であるサル一次視覚野におけるAChの機能的役割を解明する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、麻酔下動物におけるACh効果の評価法、および、覚醒動物における視覚刺激検出能の評価システムは構築できている(第90回日本生理学大会、佐川喜一賞受賞)。今後は、両者を同時に実施するために、さらに改良を加えた視覚刺激検出能を評価する実験システムを考案し、動物が視知覚を生じている状態でのAChの修飾効果を調べていく予定である。具体的には、覚醒状態で、不動化することのできる脳固定装置を用いて、ラットに視覚刺激検出課題を実施する。課題遂行中のラットの一次視覚野から神経活動を記録しつつ、AChを投与することで、検出能と神経活動の関係を調べる。
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Research Products
(3 results)