2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J03000
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上津原 正彦 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 宇宙ごみ / スペースデブリ / 破砕 / 起源同定 / 静止軌道 / 光学観測 |
Research Abstract |
地球軌道上に存在する不要な人工物,通称スペースデブリは,人類の宇宙開発利用にとって非常に脅威の存在である.本研究は,高度36000km周辺の静止軌道領域における宇宙機破砕由来デブリの空間分布の把握状況の劇的改善を目指している.本研究ではこの目的を実践的に実現するために,光学センサを用いた従来の静止軌道デブリ観測方法に,破砕時点・観測時点の破砕由来デブリの状態の予測方法を応用することを提案している. まず,観測した破砕由来デブリの起源同定を行う方法を提案し,理論・実観測の両観点から検証した.提案した起源同定方法では,静止軌道領域の破砕由来デブリが経験するダイナミクスの特徴を利用する.破砕由来デブリが軌道面ベクトルに関して持つ特徴を用いると,軌道決定に成功した破砕由来デブリの起源を決定論的に識別可能になることが明らかになった.また,破砕由来デブリが角速度ベクトル平面に関して持つ特徴を用いると,時系列画像上で検出した破砕由来デブリの軌跡の起源を確率論的に識別可能になることが明らかになった. 次に,未確認の破砕事象由来のデブリ探索の実現性を理論的に検証した.静止軌道周辺において,破砕時刻に数週間程度の不確定性がある場合でも破砕から約十年経過した以降は破砕由来デブリの軌道の交差領域は二箇所に収束することが判明した.このことから,破砕発生の有無を検証するために必要な観測計画が立案可能であることが判明した. さらに,破砕由来デブリの観測結果に基づき破砕事象の規模を推定する方法を提案し,実際に発生したロケット上段機体の破砕規模を推定した.破砕規模推定に必要な対象由来のデブリの観測データを得るために,協同観測を台湾・日本で実施し,デブリ観測効率化に必要な観測網運用のノウハウを獲得した.確率論的起源同定方法によって対象由来のデブリと判定された観測物体数から,破砕の規模を推定することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は起源同定方法の実証と,協同観測の実施までであった.この2点が早期に完了したため,本研究の達成目標である破砕由来デブリの環境把握に直接関わる研究に着手することになり,大いに研究が進展した.
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Strategy for Future Research Activity |
破砕規模の推定は,デブリの空間分布の把握状況の改善に大きく貢献するため平成25年度も引き続き研究を深めていく.これまでに確率論的起源同定手法に基づき破砕事象の規模を推定する一連の解析ルーチンが確立されたため,平成25年度においては,ルーチンを繰り返し実行するソフトウェアを構築して破砕の規模の推定精度を高めていくとともに,一度の観測において複数の破砕事象を同時に推定対象とすることで,破砕規模推定の効率化と確度向上の両立に取り組む.未確認破砕事象の発生有無の検証についても,本年度の研究成果を用いて,破砕事象を経験したことが疑われているロケット上段機体由来の破片を実観測によって探索していき,未確認破砕事象の同定に取り組む.
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Research Products
(5 results)