2012 Fiscal Year Annual Research Report
深海熱水域に生息する特異微生物の環境適応機構の分子的解明と地球環境修復への展開
Project/Area Number |
12J03037
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
美野 さやか 北海道大学, 大学院・水産科学院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 化学独立栄養細菌 / 深海底熱水活動域 / 生物地理学 / MLSA / MALDI-TOF/MS / 群集生態学 / N_2O |
Research Abstract |
本課題は、培養技術を駆使し、深海底熱水活動域に生息する特異な微生物の分離、生態学的研究、および地球環境修復への応用展開を目的としている。 2012年度は、深海底熱水活動域に普遍的に棲息する化学合成独立栄養細菌(主にPersephonella)群集に関して、熱水活動域ごとの異質性に焦点を当て研究を進めた。 沖縄トラフおよび南部マリアナトラフ由来の熱水性試料からPersephonellaに属する分離株を30株以上取得し、それらを対象として、ゲノムレベルでの比較を可能とする多遺伝子座配列解析法の確立に成功した。本解析により2つの海域由来のPersephonella群集は異なっており、地理的に隔離されていることを見いだした。さらに遺伝子型に加え表現型の異質性を評価するために、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-TOF/MS)を用いた解析法を確立した。MALDI-TOF/MSのスペクトルデータを用いたクラスター分析の結果、由来する海域ごとのクラスターが形成されたことから、表現型でも沖縄トラフと南部マリアナトラフ由来の群集は異なることを見いだした。本発見により、熱水活動域の微生物群集にも明確な地理的隔離が存在することが示された。 また、上記分離株の取得過程で新規性の高いN_2O還元細菌群集を取得することに成功した。GC-MSを用いたCO_2およびN_2O測定法を確立し、本微生物群集のN_2O消費を確認した。現在この細菌群集からの純粋分離を試みている。 さらに、培養株の乏しいインド洋由来の分離株を取得するため、インド洋での調査航海に参加した。本航海では20種類以上の熱水性試料を取得し、既に微生物の分離培養にも成功している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱水活動域に普遍的に棲息する難培養性の微生物群集の各海域のの異質性高い解像度で比較した例は少なく、本課題1年目でその比較の基盤を確立したため。また、新規N20無害化法の確立必要不可欠なN2O還元細菌を取得することに成功したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
深海底熱水活動域由来の特異微生物群集の異質性に関しては、2012年度末に取得したインド洋由来サンプルから微生物の分離培養を試み、南部マリアナトラフおよび沖縄トラフ由来の微生物群集から得られた結果と比較する。これにより、異なる熱水活動システム間での微生物群集の異質性の解明が可能となる。 また、N2O還元細菌群集に関しては、純粋株の取得を目指すと共に、N20還元およびバイオフィルム形成時に活性化する遺伝子の特定および発現定量、ガス消費量の測定を予定している。
|
Research Products
(2 results)