2012 Fiscal Year Annual Research Report
六放サンゴ亜綱の系統分類学的研究-スナギンチャク目の単系統性の検証-
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12J03048
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
藤井 琢磨 琉球大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スナギンチャク / 未記載種 / ミトコンドリアDNA / 新亜目 / イソギンチャク / 16S rDNA / 単系統性 / 生物多様性 |
Research Abstract |
ミトコンドリアDNAの2領域を用いた分子系統解析および形態解析の結果、世界最小種である可能性が考えられる1つのスナギンチャク目未記載種が、既知のスナギンチャク類と科以上のレベルで異なる系統学的位置づけにある事が明らかとなった。本未記載スナギンチャク類はツブスナギンチャク科と単系統の姉妹群を形成し、既知のスナギンチャク類とは新亜目レベルで異なる系統である事が明らかとなった。この結果は、その形態や生態学的特徴を原因として注目されてこなかった種が、生物多様性を評価する上で重要である場合がある事を示している。 また、これら新たに見出されたスナギンチャク類を含め、先行研究によって得られているスナギンチャク目およびイソギンチャク目のミトコンドリア16S rDNA領域の塩基配列を用いて系統解析を行った結果、この2目の単系統性が示唆された。この2目を網羅的に扱った分子系統解析は例がなく、各目の単系統性を支持する貴重な成果である。しかし、特にイソギンチャク目では解析に用いる事が出来なかった分類群が複数あり、これら2目の系統関係を明らかにするには未だ不十分である。今後、多くの分類学的問題点の解決を経て、DNAおよび形態形質を複合的に用いた解析を行うことで、これらの系統関係が明らかにされる事が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つ掲げた目的小区分のうち、最初の2つに関してはおおむね達成できたと言える。未記載種は既に記載論文の投稿準備が完了している。各水族館や博物館等の協力も得られた事で、有用な標本を系統解析に用いる事ができ、現時点で出来得る限り、スナギンチャク目とイソギンチャク目の系統関係の推定も可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた標本を元に、解析に用いる遺伝子マーカーを増やす(ミトコンドリアCOI,核ITS-rDNA等)。 既知の分類群とは大きく異なる系統の未記載種、分類学的に要再検討の種も見つかっており、適宜、追加で採集を行う必要がある。系統関係を推定する上で、分類学的知見が極めて不足しているグループが多いことが大きな問題点である。これらのグループに関しては、分類学的位置づけを明らかにするという重要課題が新たに発生しているが、ひとまず分子系統解析を行うことで高次分類群レベルでの系統関係を推定する事が本研究の最優先事項である。 DNA解析を行うことで、体分類群が有する分類学的問題点を浮き彫りにする事ができると考えられる。
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Research Products
(6 results)