2012 Fiscal Year Annual Research Report
き裂系における地殻流体の流動ダイナミクスに関する研究
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12J03097
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石橋 琢也 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | き裂 / チャネリングフロー / 間隙構造 / 寸法依存性 / せん断滑り / き裂ネットワーク / 封圧 / THMC連成 |
Research Abstract |
本年度はまず,応力下におけるき裂の間隙構造および流体流動特性のマルチスケールモデリング法の確立に成功した,本手法は,上下二面のフラクタル数値き裂表面同士を接触面積がラボスケールで得られた値と一致するよう接触させるというもので,かみ合ったき裂をモデリングする場合は上下表面形状の微妙な違いを導入した.続いて,勇払油ガス貯留層を対象として,臨界応力き裂に対して不均質間隙構造を与えた精密DFNを構築した.このとき,間隙構造は寸法に応じたものとし,またそれらは本研究で確立した手法により決定した.精密DFN内の流体流動の解析にはGeoFlowを用いた.その結果,精密DFNであれば「二つの坑井間で生産能力に三桁近い差が生じる」という勇払での観察事実が再現可能であることが明らかになった,これはすなわち,勇払の貯留層内では三次元的な優先流路が形成されており(チャネリングフロー),坑井がこの流路をうまく貫通してはじめて高い生産能力が望めることを示唆する.フィールドスケールにおいてき裂ネットワーク内のチャネリングフローを考慮した研究は,世界的に見ても本研究以外にはない.そして,最後にGeoFlowに「DFN内の流体流動特性の経時変化」のコンセプト導入に向け,単一き裂内の流体流動特性の経時変化に関しての基礎的な知見を獲得した.例えば,炭酸塩岩においては力学的影響(接触点での圧力溶解)と化学的影響(自由表面溶解)の競合を考慮することが重要であることが明らかになった.き裂流動特性の経時変化に関する知見は不足しているのが現状であり,本研究のような基礎的検討というのは非常に重要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に示した通り,応力下におけるき裂の間隙構造および流体流動特性のマルチスケールモデリング法の確立が完了した.また,勇払油ガス田の精密DFNに関しても,その構築及び流体流動を解析することに成功している.さらに,き裂流動特性の経時変化に関する基礎的知見は,(想定していたものとは異なるが)獲得されている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,まず応力下におけるき裂の間隙構造および流体流動特性のマルチスケールモデリング法に関して論文と1して発表する予定である.また,精密DFNの解析に関しては,シミュレーションの数を増やし統計的処理を進めることが必要であるが,その方法論等はほとんどが検討済みであり,詳細を詰めた後はスムーズに研究が進められると考える.また,物質移動に加え,熱移動を解析することができるようにシミュレータを改良することを考えている.ここで,き裂流動特性の経時変化に関しては,計画ではX線CTスキャナを用いて間隙構造の経時変化の直接観察を目指したが,X線CTの分解能が十分ではなく,これを実現できるか不明である.対応策としては,X線CTで間隙を測定する代わりに,レーザー変位系を用いて測定した表面形状データを用いてはどうかと考えている.この点以外に関して,想定していた以上の知見の獲得に成功した.
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