2012 Fiscal Year Annual Research Report
膵ランゲルハンス島と免疫関連細胞の複合化による糖尿病治療の試み
Project/Area Number |
12J03121
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹本 直紘 京都大学, 再生医科学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 糖尿病 / 膵島移植 / 細胞表面修飾 / ssDNA-PEG脂質 / 免疫関連細胞 / リポソーム |
Research Abstract |
・免疫拒絶反応抑制を目指した膵島表面へのセルトリ細胞の固定化 本研究では、拒絶反応の抑制を目指して、セルトリ細胞を膵島表面へ固定化し、その機能評価を行った。 ssDNA-PEG脂質は脂質部と細胞膜との疎水性相互作用により細胞形態・機能に障害を与えることなく細胞膜上に導入され、細胞表面に提示されるssDNAのDNAハイブリダイゼーションにより、膵島表面にセルトリ細胞を固定化することができた。セルトリ細胞を膵島表面に固定化することで、臨床により近い経門脈的な肝臓への移植後も、肝臓において移植膵島近傍にセルトリ細胞を局在させることに成功した。セルトリ細胞固定化膵島は、"拒絶反応"の抑制能を有した、免疫抑制剤を用いない新規な膵島移植法として期待できる。 ・セルトリ細胞と膵島の複合細胞凝集体の形成と長期免疫拒絶反の制御 セルトリ細胞と膵島細胞の複合化方法として、ハンギングドロップ培養を用いたものが考えられる。実際、この方法を用いることで、外側に膵島細胞、内側にセルトリ細胞が分布し、両細胞機能を維持した複合細胞凝集体の作製に成功した。さらに、薬物誘導糖尿病マウスの肝臓へ移植したところ、免疫抑制剤を使用することなしに長期に亘り血糖値の正常化に成功し、組織学的評価より移植片の生着率向上が認められた。膵島移植の臨床に近い形でセルトリ細胞の利用可能性を提示できたことは、免疫抑制剤を用いない新規な膵島移植法の第一歩と言える。 ・血管内皮細胞への抗酸化剤含有リボソームの高効率導入 ssDNA-PEG脂質を用いて血管内皮細胞表面に抗酸化剤含有リボソームを固定化し、細胞内部に抗酸化剤を効率的に送達することで、臓器移植時の虚血再灌流障害の軽減を図る。 内皮細胞表面に抗酸化剤含有リボソームを固定化し、細胞内部に送達することで、酸化ストレス付与時に細胞で発生する活性酸素種を効率よく抑えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
膵島と免疫関連細胞の複合化について、免疫関連細胞としてセルトリ細胞を用いたものに関しては、セルトリ細胞を膵島表面に固定化したものについては既に論文に発表し、ハンギングドロップ培養により複合化し動物実験により機能評価をしたものについては現在投稿中である。また、制御性T細胞や可溶化補体レセプタータイプ1発現細胞を用いるものに関しては、現在推進中ではあるが、今後の成果は十分に期待できる段階にはあると考えている。血管内皮細胞へのリボソーム固定化については、固定化したリボソームが細胞内へ誘導されることを見出し、その成果を論文に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫関連細胞としてセルトリ細胞を用いるものに関しては研究成果をまとめている段階である。投稿中の論文に関しては、受理されるまできちんとフォローしていきたい。 今後は、制御性T細胞や可溶化補体レセプタータイプ1発現細胞など、他の免疫関連細胞を利用したものについて研究を進めていく方針である。現在、制御性T細胞については既にマウスからの分離に成功しており、様々な膵島との複合化方法を検討し、各々比較評価しているところである。可溶化補体レセプタータイプ1発現細胞については、遺伝子工学的手法により、当該細胞の作製を試みている。作製に成功次第、膵島との複合化を試みる予定である。いずれの免疫関連細胞を用いたものについても、in vitroでの各細胞機能の評価を行い、可能な限り応用研究を目指して、動物実験によるin vivo機能評価段階まで研究を進めていきたいと考えている。
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Research Products
(11 results)