2012 Fiscal Year Annual Research Report
腐朽菌と細菌類間の木材腐朽時における微生物相互作用メカニズムの解析
Project/Area Number |
12J03141
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
中田 裕治 東京農工大学, 農学部, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 木材腐朽菌 / PCR-DGGE解析 / PNA / FISH解析 |
Research Abstract |
本年度は、腐朽菌と細菌類間の相互作用に関するメカニズムを明らかにするために、前者に同調的な後者を探索することを目的とした。細菌類が腐朽菌と相互作用を呈するには腐朽材内で同様の局在性を呈していると考えられる。そこで、腐朽材中での腐朽菌の局在性の解析を行った。 街路樹のサクラから、生長錘を用いて得られたコアサンプルを約3cm毎に6分割した。各区画からGenomeDNAを抽出し、それを鋳型としてPCR-DGGEを行い、腐朽材中での腐朽菌の局在を解析した。その結果、全ての樹木からF.fraxineaが検出された。本菌はサクラの害菌として知られ、採取地周辺のサクラの腐朽の主要な原因菌であることが示唆された。また、本菌が検出された区画の近傍において、真菌類が検出されない区画が存在していた。このことから、腐朽菌は樹木中で高い局在性を呈していることが予想された。腐朽菌と相互作用を呈するような細菌類は、腐朽材中で共局在していると考えられるため、本結果は、本研究課題の推進にとって重要な知見となった。 腐朽菌と細菌類の位置関係を解析するために、PNAプローブを用いたFISH法による腐朽材中の菌糸の可視化技術の構築を行った。白色腐朽菌のP.chrysosporium及び褐色腐朽菌のP.placentaを指標菌として用いて木片中の両菌の可視化を試みた。PVDF用ブロッキング剤で処理した場合で両菌の菌糸を可視化することに成功した。特に、P.chrysosporiumの解析において、多くの栄養物を保持しているとされる放射組織内で複数の菌糸に加え、多くのデンプンが観察された。以上のことから、腐朽菌は腐朽初期において本組織の様な栄養が豊富な領域を攻撃し、続いて貧栄養の領域を分解している可能性が示唆された。本結果は、初期の腐朽における腐朽菌の局在の解析に重要な知見となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、サクラを題材として、腐朽菌の網羅的解析を行い、その成果を日本木材保存誌第39巻にて公表した。また、腐朽菌と細菌類の位置関係を解析するために、PNAプローブを用いたFISH解析法の構築を行い、木材中の菌糸の可視化に成功した。この成果は、Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, Vol.77に受理された。これらの腐朽菌の木材中における局在性に関する解析手法を構築し、細菌類との関連性を調査する研究もすでに実施している。以上のことから当該研究の進捗状況について「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
腐朽菌と同調的な細菌類を探索するため、異なる期間堆積処理した竹材のオガコ(0,2,4,6,8,12,16,20,24週間)をサンプルとして、細菌類と担子菌に特異的なプライマーを用いてPCRを行ったところ、増幅産物が検出されない週がみられた。このことから、堆積処理中に微生物叢に変化が生じたと考えられた。細菌類の菌叢解析では、4週目以降に新たなバンドが検出された。ゲル中のバンドを切り出し、精製した。本年度は、これらのサンプルの塩基配列を決定し、細菌類の同定を行う予定である。また、担子菌の菌叢解析も行う予定である。その結果から、担子菌と同調的な細菌類をリアルタイムPCR解析により探索し、両者の位置関係をFISH解析で明らかにする予定である。
|
Research Products
(5 results)