2012 Fiscal Year Annual Research Report
N-アレニルニトロン鍵中間体を活用する新規触媒反応の開発
Project/Area Number |
12J03176
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
張 冬 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 遷移金属触媒 / 骨格転位反応 / σ結合 / オキシム / ヘテロ環化合物 / N-アレニルニトロン / 環化付加反応 / Hetero-Diels-Alder反応 |
Research Abstract |
π酸性遷移金属を触媒とする骨格転位反応は、1988年にTrostらにより、パラジウム触媒を用いた1,6-エンインの骨格転位反応が報告されたことを契機に、精力的に研究されている領域である。この反応系は、他の反応系では切断困難とされる強固なσ結合の開裂を伴うことから、結合活性化反応として興味深い。さらに複雑な分子骨格を一段階で構築する有機合成化学的観点からも魅力的である。これまでの研究では合成素子として1,n-エンインやプロパルギルエステルが主要な対象であった。これに対し、申請者は、O-プロパルギルオキシムが新たな合成素子として、全く過去に例がない骨格転位反応を起こすことを明らかにしている。また、当化合物の触媒的分子内骨格転位反応に示唆されている高反応性を有するN-アレニルニトロンが重要な鍵中間体であるという知見が得られた。申請者は、次なるステージとして、N-アレニルニトロン中間体を捕捉・活用し、O-プロパルギルオキシムの「合成素子」としての有用性の拡充並びに新規触媒反応開発により、高官能基化されたヘテロ環化合物を効率的に構築する有機合成手法を提供することを目的とする。 N-アレニルニトロン中間体が(1)ニトロン(2)アザジエン(3)アレンの3種の反応性官能基を有していることから、各々の反応性に応じた捕捉剤を系中に添加することで、各部位の特性を反映する様々な触媒反応を開発できると考え、幾つかの捕捉剤について検討した。 申請者はまず、N-アレニルニトロン中間体がニトロンとしての反応性を着目し、dipolarophileとの1,3-双極子環化付加反応を検討した。検討の結果、トシルイソシアネートを用いることで、「3+2」環化付加反応・脱二酸化炭素・環化の連続反応が進行し、多置換ジヒドロピリミジン生成物を中程度の収率で得ることを見出した。次に、N-アレニルニトロン中間体がアザジエンとしての反応性を着目し、求ジエン体とのHetero-Diels-Alder反応を検討した。検討の結果、アルキンやアゾジカルボキシレートを用いた場合、hetero-Diels-Alder反応が進行し、それぞれ多置換ピリジン誘導体、トリアジン誘導体を得た。今後、これらの反応の反応条件の最適化を行うことで、N-アレニルニトロン中間体の反応性を解明する基礎且つ重要な知見が得られると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した反応を見出すことに成功したものの、反応生成物の収率には課題が残っている。今後、反応条件の最適化について更なる検討を行い、収率の向上を目指す。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請者は、N-アレニルニトロン中間体を捕捉・活用し、O-プロパルギルオキシムの「合成素子」としての有用性の拡充並びに新規触媒反応開発により、高官能基化されたヘテロ環化合物を効率的に構築する有機合成手法を提供する。これまでに、トシルイソシアネートを用いることで、「3+2」環化付加反応・脱土酸化炭素・環化の連続反応が進行し、多置換ジヒドロピリミジン生成物を中程度の収率で得ることを見出した。また、アルキンやアゾジカルボキシレートを用いた場合、hetero-Diels-Alder反応が進行し、それぞれ多置換ピリジン誘導体、トリアジン誘導体を得た。今後はこれらの反応を詳細に検討する。また、得られた知見を活かして、新たな触媒反応を開発する。
|