2013 Fiscal Year Annual Research Report
N-アレニルニトロン鍵中間体を活用する新規触媒反応の開発
Project/Area Number |
12J03176
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
張 冬 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遷移金属 / オキシム / 骨格転位 / ヘテロ環 / 末端アルキン / ケテンイミン / アジド / アミジン |
Research Abstract |
π酸性遷移金属を触媒とする骨格転位反応は、他の反応系では切断困難とされる強固なσ結合の開裂を伴うことから、結合活性化反応として興味深い。さらに複雑な分子骨格を一段階で構築する有機合成化学的観点からも魅力的である。これまでの研究では合成素子として1,n-エンインやプロパルギルエステルが主要な対象であった。これに対し、申請者は、O-プロパルギルオキシムが新たな合成素子として、全く過去に例がない骨格転位反応を起こすことを明らかにしている。また、当化合物の触媒的骨格転位反応に示唆されている高い反応性を有するN-アレニルニトロンが重要な鍵中間体であるという知見が得られた。申請者は、次なるステージとして、N-アレニルニトロン中間体を捕捉・活用し、O-プロパルギルオキシムの「合成素子」としての有用性の拡充並びに新規触媒反応開発により、高官能基化されたヘテロ環化合物を効率的に構築する有機合成手法を提供する。このような作業指針のもとに、多様なヘテロ環構築反応を見出した。これらの反応は、アルキンの遷移金属のπ配位と、引き続くオキシム窒素原子の求核攻劉, よって得られるビニル金属中間体を経て進行する. 今回申請者はChangらの報告(JACS. 2005, 127, 02038-2039)に基づき、末端アルキンを有するO-プロパルギルオキシムとスルホンアジドを銅触媒存在下で反応させた場合、銅アセチリド中間体の発生を経てケテンイミン中間体を生じると予想した。更に、ケテンイミンに対するオキシム窒素原子の求核攻撃を経る新たな分子変換が進行すると考えた。このような作業仮説の下に、末端アルキンを有するO-プロパルギルオキシムとスルホンアジドとの銅触媒反応について検討した結果、多くの生理活性物質に含まれる基本骨格であるα、β-不飽和N-アシルアミジン化合物が良好な収率で得られることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は研究計画に従いこれまでに、N-アレニルニトロン鍵中間体を活用した二種類の分子間カスケード反応を見出し多置換ジヒドロピリミジン、トリアジン生成物が良好な収率で得られた。今後、N-アレニルニトロン鍵中間体を活用する新たな環化連続反応の開発に取り組んでいきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は今後、N-アレニルニトロン鍵中間体がアレンとしての反応性に着目し環化連続反応の開発に取り組む。O-プロパルギルオキシム化合物を分子修飾することで、置換基上に窒素、酸素又は炭素求核部位を導入し、求核部位を有するアレン中間体が得られると期待できる。求核部位を有するアレンの環化反応は有用な環構築法として注目されている。例えば、遷移金属を用いたアミノアレンの環化反応は含窒素複素環を構築し得る有用なプロセスである。このことから、O-プロパルギルオキシム化合物を分子修飾することにより、単純な出発物質から、高度に官能基化された生成物を合成できると期待される。
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