2014 Fiscal Year Annual Research Report
多因子疾患が存在する理由の人類進化学的考察:環境適応と拡散に伴う疾患アレルの蓄積
Project/Area Number |
12J03234
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
中込 滋樹 統計数理研究所, 統計数理研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本人集団 / 自然選択 / 近似ベイズ計算 / 疾患アレルの起源 / 二重構造モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「疾患」を「進化学的」に捉える進化医学的アプローチを実践し、「疾患が人類集団に存在する理由」を解明することを目指している。多因子疾患に関係する遺伝的変異(アレル)は患者だけでなく健常者にも見られることから、人類集団の拡散に伴って拡がってきたと考えられる。そこで、本年度は「疾患アレルの起源」と「日本人集団が成立した歴史」を推定した。 (i) 自己免疫疾患アレルの起源 多因子疾患の1つである自己免疫疾患のリスクが高い理由の1つとして、かつては病原菌に対して有利に働いていたアレルが現代の環境においては過剰な免疫応答を示すためであると考えられている。本研究では、近似ベイズ計算法と呼ばれる統計学的手法を用いて、自然選択が起こった時期及びその選択圧を検証した。その結果、疾患リスクを高めるアレルは約1万年前に生じ、その後急速に集団中に拡がってきたことが示された。このことから、農耕文化の発展に伴う人口密度の上昇や家畜化により感染症リスクが高まり、その適応として自己免疫疾患アレルが集団中に拡がったことが示唆された。 (ii) 現代日本人が成立した歴史 疾患アレルは、自然選択だけでなくヒトの移動によっても拡がる。現代日本人の起源として、「小進化説、置換説、混血説」の3つの仮説が提唱されてきた。本研究では、全ゲノム一塩基多型データを用いて、近似ベイズ計算法により3つの仮説の尤度を統計学的に検証した。その結果、「現代日本人は縄文人と弥生人の混血によって誕生した」とする混血説の尤度が小進化説及び置換説の尤度に対して有意に高いことが示された。さらに、弥生人との分岐後、完新世の始まりに縄文人の系統が地域ごとに分化し、本州を中心とする縄文人の系統が弥生人と混血し、現代日本人が誕生したことが示された。 以上の結果から、複雑な集団史と地域における環境適応の結果として疾患アレルが拡がってきたと考えれる。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Genome-wide SNP analysis reveals population structure and demographic history of the Ryukyu Islanders in the southern part of the Japanese Archipelago2014
Author(s)
Sato T., Nakagome S., Watanabe C., Yamaguchi K., Kawaguchi A., Koganebuchi K., Haneji K., Yamaguchi T., Hanihara T., Yamamoto K., Ishida H., Mano S., Kimura R., Oota H.
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Journal Title
Molecular Biology and Evolution
Volume: 31(11)
Pages: 2929-2940
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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