2012 Fiscal Year Annual Research Report
フコキサンチンによる血糖改善効果と骨格筋繊維分化に関する研究
Project/Area Number |
12J03290
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西川 翔 北海道大学, 大学院・水産科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 骨格筋 / フコキサンチン / フコキサンチノール / エネルギー代謝 / マイオカイン / GLUT4 / AMPK |
Research Abstract |
本研究では1つ目としてFxが糖尿病・肥満モデルKK-Ayマウスの骨格筋におけるエネルギー代謝や筋繊維分化に与える影響を検討した。その結果、Fx投与により筋繊維マーカーであるトロポニンのmRNA発現量に変化が見られなかったが、脂肪酸代謝に関係するCpt1bやACADMや筋持久力に関係するMyoglobinなどのmRNA発現が有意に増加した。さらに、運動により骨格筋からの分泌が増加し、他の組織でのエネルギー代謝に関係するマイオカインのmRNA発現が有意に増加した。これらの結果から、FxはKK-Ayマウスの骨格筋において筋繊維分化へは影響しないものの、β酸化の亢進や筋持久力の向上に加え、身体全体でのエネルギー代謝を高めることで効率的に糖尿病や肥満を改善することが期待された。Fxやその生体内代謝物であるフコキサンチノール(FxOH)はKK-Ayマウスの骨格筋やマウス骨格筋モデル細胞において骨格筋の主要な糖トランスポーターであるGLUT4のmRNAやタンパク質発現を増加させる。そこで、2つ目として、Fxの生体内代謝物フコキサンチノール(FxOH)をマウス骨格筋モデル細胞に添加し、GLUT4の発現誘導機序について検討を行った。その結果、AMPK経路の阻害剤は、FxOHによるGLUT4のmRNA発現の増加を打ち消した。さらに、KK-Ayマウスの骨格筋やモデル細胞においてAMPKの活性化が見られたことから、FxによるGLUT4発現の増加にはAMPK経路が関係することが推察された。骨格筋においてAMPKは下流因子であるPGC-1αやMEF2Aによる転写を活性化することで、筋繊維の分化やGLUT4発現の誘導に加え、β酸化などエネルギー代謝に関連する因子の発現を誘導することが知られている。このことから、AMPKはFxの作用機序の重要な因子の1つとして考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フコキサンチンはKK-Ayマウスの骨格筋において筋繊維の分化に影響しないことが推察されたことから、当初の研究計画を変更する必要があった。しかし、フコキサンチンによる骨格筋での脂肪酸代謝の活性化に加え、近年注目されているマイオカインの誘導など興味深い知見が得られた。更に、GLUT4の発現誘導機序としてAMPK経路が関与することを新たに見い出した。AMPKはGLUT4の発現誘導に加え骨格筋のエネルギー代謝などに重要な役割を担う。 よって本研究から、フコキサンチンによる抗肥満・抗糖尿病効果の作用機構を考察する上で重要な知見が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
フコキサンチン及びフコキサンチノールによる骨格筋でのGLUT4の発現誘導機序としてAMPK経路が考えられたことから、その下流であるMEF2やPGC-1αの活性化など、さらに詳細な検討を行う。また、フコキサンチンによりマイオカインの発現が誘導されることから、この点についても誘導機序など更なる検討を行う。
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Research Products
(5 results)