2013 Fiscal Year Annual Research Report
偏光X線・多波長観測を駆使した特異X線天体のマグネター仮説の検証
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12J03320
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
榎戸 輝揚 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 中性子星 / 宇宙観測 / X線天文学 / マグネター / 磁場 / ソフトガンマ線リピーター / 特異X線パルサー / パルサー |
Research Abstract |
(1)マグネターが超強磁場の中性子星であることの直接的な観測証拠のひとつは、そのような環境下で磁力線に強く束縛された電子雲の中を伝搬するX線が、強く偏光している証拠を見つけることである。NASAと理化学研究所で共同開発を続けてきた、電子飛跡を用いたガス偏光検出器の性能を評価するため、4月16~22日にかけてニューヨーク近郊のブルックヘブン国立研究所にてビーム試験を行った。榎戸はその全日程に参加するとともに試験後の詳細解析を担当し、検出器中でのX線の相互作用位置に由来する偏光感度の違いをエネルギーごとに定量化した。さらにこの検出器の系統誤差を押さえ込む補正方法を見いだした。これらの結果に基づき、偏光計の改良が進んでいる。(2)また観測研究については、これまでのX線宇宙観測衛星「すざく」によるマグネターの研究結果について、米国モンタナ州立大学での招待講演を皮切りに、京都大学基礎物理学研究所の滞在型研究会、イェール大学のASTRO-Hのサイエンス会議、新学術領域研究が主催する中性子星ウィンタースクールなど、8件の招待講演に呼ばれた。この他、早稲田大学、青山学院大学などのセミナーに呼ばれ、活発な議論を行った。それと同時に、連星系の中にマグネターに準じる強磁場の中性子が存在するかという疑問に答えるため、磁場が強いことにより中性子星の自転が極めて遅くなった可能性のある、最も自転周期の短いX線パルサー 4U 1954+319のすざく解析を完了し、磁場強度が10^13Gに近い可能性を指摘する論文をAstrophysical Journalに投稿した。第二著者としてPhysical Review Letterへの投稿も行った。(3)中性子星の研究のもうひとつの切り口は、大きな有効面積と高い時間分解能を持つ観測装置の開発であり、NASAが主導するNICERミッションはまさにうってつけである。ゴダード宇宙飛行センター滞在時に、X線集光系の性能評価作業に参加し、ミッションに必要な有効面積の評価作業を確立するとともに、打ち上げ用の詳細設計に参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強磁場測定の切り札となる偏光計の理解、改良作業は着々と進行しており、これまでに観測された「すざく」衛星のデータ解析も論文投稿ができた。また、「すざく」衛星とSwift衛星を用いた、マグネター総解析も論文投稿が見えて来ている。さらに、マグネター4U 0142+61のパルス時刻解析から、内部に巨大なトロイダル磁場をもつ可能性を指摘する論文を、第二著者としてPhysical Review Letterに投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初打ち上げが予定されていた偏光X線の専門観測衛星GEMSがキャンセルされ、ロケット実験も計画が先延ばしになってしまったものの、偏光計の開発と評価は進んでおり、日本チームの貢献も認められつつある。今後、より性能の向上した装置での観測が長期的視点で期待できる。また、マグネター観測の科学的目標の観点では、「すざく」衛星を使った4U 0142+61の観測結果と、過去のマグネター観測の総合結果が効果的に働き、強磁場の傍証が数多く蓄積されつつある。GEMSを実効的に埋め合わせる形で、中性子星の質量と半径を決める専門衛星4月NICERミッションがNASAに採択され、そのチーム内で貢献を積み重ねており、時刻解析からマグネターの強磁場を調べる代替案の検討を進めている。これらを組み合わせ、マグネター仮説の検証をさらに推進する。
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