2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J03394
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
外山 喬士 東京理科大学, 薬学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 心血管系疾患 / メチル水銀 / ミトコンドリア障害 / Drp1 |
Research Abstract |
近年の疫学調査よりヒトへのMeHgの蓄積と心疾患の関与が示唆されているが、動物実験での再現はされておらず、そのメカニズムおよびリスク軽減法は不明である。本年度では、「MeHgは心臓の病態を亢進させる心疾患リスク因子である」との仮説のもと、マウスに圧負荷心不全モデルである横行大動脈狭窄(TAC)を施し、MeHgの心臓病態への関与を検討した。 マウスに、神経障害が見られない比較的低濃度のMeHg (10ppm)を10日間飲水投与後、横行大動脈を狭窄し、心臓エコー検査を実施した。その結果、MeHgはTACによる心機能の悪化を促進し心不全を誘導することが明らかとなった。TACによる心不全時にはミトコンドリアの分裂に関与するDrp1のチオール基がSNO化を介して活性化することが知られている。そこで、MeHgによるチオール基の修飾が、Drp1を活性化したと予想し、MeHg-TACマウスの心臓においてDrp1のS-水銀化をBPMP法により検討した。その結果、MeHg投与によってDrp1がS-水銀化されることが明らかとなり、本条件下でDrp1はミトコンドリアに移行していることが示された。ラット新生児由来心筋細胞(NRCM)にMeHgを曝露するとミトコンドリアの小胞化が亢進し、ミトコンドリア由来のROSの産生が増加、ATP産生が減少することを見出した。Drp1の特異的な阻害剤であるMdivi-1を処理することで、MeHgによるミトコンドリアの分裂、ROS産生は抑制され、MeHgによる心筋障害も顕著に抑制された。以上の結果は、潜在的に心疾患を有するヒトに対し、MeHgがそれを促進することで心疾患のリスク因子となる可能性を示している。さらに本年度では、その機構の一つにDrp1のS-水銀化が関与することの一端を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
メチル水銀単体では、心血管系疾患に関与しないことを示した上で、心臓に負荷がかかる条件ではその毒性が顕著に現れることを見出した。更に、そのメカニズムの一端を解明できたことは、当初の研究目的以上に順調に計画は進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、Drp1のメチル水銀によるS-水銀化がどのように心臓の適応破綻に関与するかを検討する。具体的には、メチル水銀の標的のシステインをMSで特定し、心筋細胞への結合部位変異体Drp1の高発現によって検討する。
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