2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経回路ダイナミクスにおける分子機構の解明とその人工的制御
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12J03395
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊東 大輔 北海道大学, 大学院・先端生命科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 培養神経回路網 / 多電極アレイ / 同期バースト / 神経活動依存的遺伝子発現 / 最初期遺伝子 |
Research Abstract |
本年度は、計画に従い培養神経回路網のダイナミクスに寄与する分子の探索に着手した。多電極アレイ上でラット胎児大脳皮質由来神経細胞を分散し、2ヶ月に渡る長期培養を行った。この期間、多電極システムにより培養神経回路網の自発的活動(スパイク列)を計測した。自発活動は培養7日目頃から生じ始めたが、ランダムな活動であった。培養14日目頃にはバースト状のスパイクが複数の電極間で同期して計測されるようになり(同期バースト)、この活動は2ヶ月の培養期間に渡って計測され続けた。この過程において、ニューロンおよびシナプスの形態的な変化を計測するため、MAP2抗体、VGluT1抗体、VGAT抗体を用い、免疫染色および蛍光顕微鏡による観察を行った。また、画像解析ソフトによりニューロン密度、シナプス密度を定量的に解析する手法を確立した。VGluT1抗体およびVGAT抗体により可視化されたグルタミン酸作動性シナプスおよびGABA作動性シナプスは、長期発達過程において徐々に形成、ニューロン上に局在していき、数が増加する様子が観察された。このような長期時空間ダイナミクスが計測されたが、この過程においてどのような分子が関わっているかはほとんど明らかとされていない。そこで、逆転写PCR法を用い、長期発達過程における遺伝子発現変化を調べた。神経活動依存的に発現が調節される遺伝子群に着目し、これらの発現変化をアガロースゲル電気泳動により確認したところ、Arc, Egr, Homer1a等の最初期遺伝子群は培養7日目までは発現が見られなかったが、培養14日目から発現が見られ、これは1ヶ月の培養期間中維持された。これら遺伝子群の発現時期と同期バーストの発生時期が一致している事から、最初期遺伝子群の発現と同期バーストの発生には何らかの関係性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、神経活動依存的な遺伝子群に焦点を当て、これらの発現が一定期間の培養を行った後に上昇する事、さらにこの時期が回路活動の最も顕著なダイナミクスである同期バーストの発生時期と一致していることを実験的に見出した。この結果を原著論文としてまとめ、現在投稿中である。本年度の目的であった培養ニューラルネットワークのダイナミクスに寄与する分子の同定が達成され、外部入力によるダイナミクス制御に着手したため、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
外部入力によるニューラルネットワーク時空間ダイナミクスの人工的制御を試みる。刺激入力のパターンを変化させ、それぞれの刺激に応じたダイナミクス変化を解析する。ダイナミクスに変化が現れた培養ニューラルネットワークについて、最初期遺伝子群の発現変化を解析する。また、同期バーストと最初期遺伝子群との関係性をより明確にするため、AP5・CNQX等の阻害剤を長期的に投与し、このときにダイナミクス変化および遺伝子発現解析を行う。
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Research Products
(10 results)