2012 Fiscal Year Annual Research Report
水素置換による鉄系超伝導物質の物性の解明と新規超伝導物質の探索
Project/Area Number |
12J03412
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
半那 拓 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 水素置換 / 相図 / キャリアドーピング / 強磁性金属転移 / 水素脱離 / 巨大磁気抵抗効果 |
Research Abstract |
(1)鉄系超伝導体における水素を用いたキャリアドーピング法の確立に成功 先行研究によって確立された水素置換の手法を用いてCeFeAsO系の超伝導体の相図を決定した。重水素置換されたCeFeAsO1-xDxとCeFeAsO1-xHxを作製し、中性子回折測定による構造解析を行うことで、水素が酸素サイトをH-として占有していると結論した。次いで、水素置換による相図が、電子ドーピング量に基づき(O2-=H-+e-)整理出来ることを示した。その結果、超伝導ドームはx-0.5の領域まで広がっており、鉄系超伝導体に提唱されるスピン揺らぎ機構では相図の説明が困難であることを明らかにした。 (2)水素置換されたLaMnAsOの反強磁性絶縁体-強磁性金属転移の発見に成功 強相関物質系に対するキャリアドーピングが、超伝導や超巨大磁気抵抗効果など有用な物性を示すことから、強い電子相関を持つLnMnAsOに水素アニオン置換によるドーピング法を適用し、物性探査と超伝導発現の可能性を探った。その結果、LaMnAsO1-xHxで最大でx=0.73までの水素置換が可能であることを示した。x=0.73は、d軌道の電子数が鉄系における0.23個のホールをドープした電子状態に近いが、超伝導は観測されなかった。一方で、水素置換による電子ドーピングによって、反強磁性絶縁体である母相が電子ドーピングによって強磁性金属に転移し、その境界領域で60%に達する負の巨大磁気抵抗効果が発現することを見出した。 (3)水素脱離によるCaFeAsF1"職の超伝導発現の発見 1111型鉄系超伝導体であるAeFeAsF(Ae=アルカリ土類)化合物では、絶縁層の元素置換によるドーピングが困難であることから、水素とフッ素の熱脱温度の差を利用した新しいドーピング手法を提案した。CaFeAsF1.xHx(x=0.2,0.4)をアニールすることで水素が選択的に脱離し、フッ素サイトの欠損による電子ドーピングに成功しTc=29K、超伝導体積分率~30%のバルク超伝導が発現することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる目的である"鉄系超伝導体における水素を用いたキャリアドーピング法の確立"に成功し、その応用も含めたいくつか発展的な研究課題に取り組みそれぞれで成果を上げることに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として、現在高圧合成ほうでのみ達成されている水素置換法を常圧合成で行う手法の確立や、薄膜材料に対するイオン液体を用いた電界効果によって、水素置換同様に、高濃度な電子ドーピング領域における新材料の超伝導発現の可能性についても探索していく必要がある。
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Research Products
(4 results)