2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間コミュニケーションが駆動する腫瘍悪性化の遺伝的基盤
Project/Area Number |
12J03424
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 麻衣 神戸大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 細胞老化 / ショウジョウバエ / がん遺伝子Ras / ミトコンドリア機能障害 / 細胞間相互作用 / 腫瘍悪性化 |
Research Abstract |
がんの発生・進行過程において、細胞間コミュニケーションにより構築されるがん微小環境は重要な役割を果たす。しかしながら、生体内において一つ一つのがん原性突然変異ががん微小環境を構築していくメカニズムはほとんど不明である。これまでに我々は、ショウジョウバエの上皮組織をモデル系として用い、がん遺伝子Ras^<v12>を誘導した良性腫瘍にミトコンドリアの機能障害を引き起こす変異をさらに導入すると、その周辺の良性腫瘍が悪性化して浸潤転移能を獲得することを見いだした。このことは、ヒトのがんにおいて高頻度に認められるがん遺伝子Rasの活性化とミトコンドリアの機能障害が同時に起こることで、腫瘍の悪性化を誘導するがん微小環境が構築されることを示唆している。今回我々は、このがん遺伝子Rasの活性化とミトコンドリアの機能障害が同時に起きた細胞が、非可逆的な細胞周期停止を引き起こす細胞老化に特徴的な表現型の一つである、senescence associated-secretory phenotype (SASP;さまざまな分泌性タンパク質を産生・放出する現象)を示すことを見いだした。細胞老化は、細胞周期の停止によってがん抑制機構として働いていることが明らかになってきた。しかし最近になり、細胞老化を起こした細胞がSASPにより発がんを誘導することが報告されている。我々は、このSASPと類似した現象が周辺組織に腫瘍悪性化を誘発することを生体レベルで明らかにした。細胞老化を起こした細胞は、実際の腫瘍組織においても存在することが想定されるため、SASPを介した細胞間の相互作用が腫瘍の悪性化を引き起こしている可能性が考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来、2年目に行う予定であった細胞老化機構の解析系の確立を1年目に行ったため、1年目に行う予定であったことが完遂されていない。しかしこれにより、ショウジョウバエで初めて細胞老化現象の証拠を示すごとができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
二年目に行う予定であった細胞老化機構の解析系の確立に成功したため、今後さらに細胞老化を介した腫瘍悪性化メカニズムの解析を行う。
|
Research Products
(7 results)