2012 Fiscal Year Annual Research Report
変分原理に基づくDirac方程式の解法の開発とその相対論的平均場計算への応用
Project/Area Number |
12J03429
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷村 雄介 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Dirac方程式 / 変分原理 / variational collapse / fermion doubling / 相対論的平均場理論 / 密度汎関数理論 / 原子核の変形 / 原子核の対相関 |
Research Abstract |
本研究では、3次元座標空間表示を用いた相対論的平均場計算の方法の確立を目指している。これを実現するに当たり、解決するべき困難が2つ存在する。一つがvariational collapse,もう一つがfermion doublingと呼ばれる問題である。当該年度の研究成果は以下の通りである。 1.逆ハミルトニアン法とWilson fermionの方法を組み合わせることにより上述の2つの問題を回避し、有限核に対し空間対称性を仮定することなく、座標表示で自己無撞着計算を行う計算コードを開発した。これを使って、変形核を含むいくつかの原子核に対して、3次元座標表示の相対論的な計算を世界で初めて実現した。逆ハミルトニアン法を用いた計算を実用化するには、巨大な疎行列の逆行列をいかに効率良く計算するかが重要な鍵となる。我々は、Krylov部分空間法とよばれる線形方程式の反復解法により、座標表示のDiracハミルトニアンの逆を高速に計算できることを見出した。 2.Hartree-Fock-Bogohubov(HFB)方程式にも逆ハミルトニアン法を適用し、ポテンシャルが球対称である場合にエネルギー固有値・固有関数ともに正確に求められることを確かめた。Krylov部分空間法による1/Hの計算は、Diracハミルトニアンの場合より数十倍から数百倍収束が遅いことがわかった。 3.陽子・中性子対相関に関する研究を行い、N=Z核においてアイソスピン一重項チャネルと三重項チャネルの対相関の競合がpf殻核のエネルギースペクトルに与える影響を議論した。またハイパー核_Λ^<19>FにおけるA粒子の不純物効果を芯核+陽子+中性子3体模型を用いて調べ、^<18>F核の励起エネルギーと電磁遷移確率がA粒子の付加によりどう変化するかを予言し、その変化のメカニズムにおけるp殻ハイパー核_Λ^9Be,_Λ^7Liとの相違点を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は認識していなかったfermion doublingの問題に直面し、その解決に時間を割いたにもかかわらず、ほぼ計画通りに研究が進んでいる。さらに、陽子-中性子対相関に関する研究も並行して行っており、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
逆ハミルトニアン法を用いた3次元自己無撞着計算を更に進め実用化するために、まずは原子核の変形度に拘束条件をつけた計算の実現を目指す。また、Fermion doubling問題をより確実に避けるために、自己無撞着解への収束を速くすることも重要である。そのために量子化学の分野で広く用いられているBroyden法とよばれる方法を試すことを検討している。さらに、計算時間のほとんどがハミルトニアンの逆行列を計算する部分に占められているので、これを高速化するためにKrylov部分空間法を改良することも、実用化のために取り組むべき重要な課題である。
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Research Products
(9 results)