2012 Fiscal Year Annual Research Report
LHC実験におけるレプトン分布を用いた親粒子諸性質の解明
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12J03439
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川端 さやか 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | LHC / ヒッグス粒子 / 質量測定 / 質量再構成法 |
Research Abstract |
現在スイスのCERN研究所で、陽子と陽子を高エネルギーまで加速し衝突させるLHC実験が行われている。この実験により素粒子標準模型で唯一未発見であったヒッグス粒子が発見され、その性質の解明が急がれている。そこでLHC実験においてヒッグス粒子やその他さまざまな粒子の諸性質を精度よく決定することを目的として、ある特殊な重み関数を用いた質量再構成法を考案した。この方法は次の点が優れている。(1)調べたい粒子の崩壊によって生じるレプトンのエネルギー分布のみを用いる。崩壊生成物にニュートリノなどの直接検出できない粒子やジェットなどが含まれても、それらに依らず質量を再構成することができる。(2)親粒子の速度分布を知る必要がない。LHCのようなハドロンコライダーの場合、生成粒子の速度分布は不定性が大きいためこれに依らないことで不定性を抑えることができる。 この重み関数法をヒッグス粒子の質量再構成に適用してシミュレーション解析を行った。ヒッグス粒子がWボソンのペアに崩壊するモードは、Wボソンがさらにレプトンとニュートリノに崩壊する場合に終状態の粒子の不変質量を組むことができず通常質量測定は難しいとされる。このモードに重み関数法を適用した結果、陽子衝突重心エネルギー14TeVのLHCで7~8%の質量決定精度が得られることをシミュレーションにより推定した。ヒッグス粒子がVector Boson Fusionで生成されるチャネルとgluon fusionで生成されるチャネルの両方について解析を行い、gluon fusionチャネルではバックグラウンドが多いために高統計の割に高精度は得られないことを確かめた。いずれのチャネルにおいても、狙いどおり重み関数法において系統誤差が小さく抑えられることを示した。 重み関数法をヒッグス三重項模型における複荷電ヒッグス粒子の質量決定に応用する可能性についても議論を行った。今後この可能性をさらにシミュレーションなどで確認していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の主な目的であった、LHC実験における新しい質量再構成法の考案、特にヒッグス粒子の質量再構成法を考案することができ、この方法が系統誤差を小さく抑えることができることを確かめた点でおおむね順調な進展であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
既に考案した質量再構成法をLHC実験におけるトップクォークの質量測定に応用する。トップクォークの崩壊によって放出されるレプトンのエネルギー分布を用い、特殊な重み関数を構成する。理論計算には束縛状態の輻射補正計算も必要となる。さらにシミュレーション解析によってこの方法で達成できる質量決定精度を調べる。またヒッグス三重項模型における複荷電ヒッグス粒子の質量決定にも応用する。
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Research Products
(4 results)