2012 Fiscal Year Annual Research Report
シロアリのカースト分化調節機構の解明:兵隊分化をモデルとしたソシオゲノミクス
Project/Area Number |
12J03468
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邊 大 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | シロアリ / 兵隊 / カースト分化 / ソシオゲノミクス / RNA-seq / 次世代シークエンサー / GCMS |
Research Abstract |
本研究は,シロアリの兵隊カースト分化調節の至近機構を明らかにすることを目標としている.兵隊分化は職蟻からの脱皮を経て起こり,兵隊が少ないと促進され,十分になると抑制される.その制御を媒介するのは,兵隊が分泌する起動フェロモンと,職蟻でのフェロモン受容機構,及び幼若ホルモン(JH)量の変化だとされるが,詳細は不明である.そこで本研究では,(1)個体抽出物に対するGCMSを用いた化学分析と生物検定,並びにLCMSを用いたJHの直接測定により兵隊のフェロモンを単離することと,(2)次世代シークエンサー(NGS)を用いたトランスクリプトーム解析によって,職蟻において兵隊との個体間相互作用により発現量が変動する遺伝子群をスクリーニングし,フェロモン受容の機構を明らかにすることを目的とする.材料はヤマトシロアリReticulitermes speratusである. まず,職蟻並びに兵隊の体表洗浄物,ホモジェナイズ産物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分画,GCを用いて各画分に含まれる化合物を解析,比較した。その結果,本種の兵隊には,職蟻にはない特異的な化合物が多く含まれることが明らかになった。これらの特異的な化合物が兵隊分化の制御に重要な役割を果たしている可能性が示唆される。 更に,「兵隊の影響を受けなかった職蟻」と「兵隊の影響を受けた職蟻」のRNA-seqを行った。職蟻由来の20万個のコンティグにおける発現解析をした結果,兵隊の不在・存在によって有意に発現量が変動する数千個のコンティグを得た.それらのGO解析の結果,細胞の刺激応答性やシグナル伝達系に関係する遺伝子であることがわかった.本解析により,職蟻が兵隊と相互作用する際には,職蟻の感覚受容器(細胞)において,兵隊との相互作用に特異的な機構がドライブされるのではないだろうかと推察される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
化学生態学的解析では,本研究に適した分画法並びに,GCMSの解析フローを立ち上げることができた.このことは今後の順調な解析に向けて非常に大きな進歩である.実際,立ち上げた実験系を用いて兵隊特異的な化合物を見出すことができた. 分子生物学的解析では,Hiseq2000によるシークエンスが終了し,更に,シークエンス結果からバイオインフォマティスク的解析を通して,カテゴリー問で異なる発現パターンを示す遺伝子を大量にスクリーニングすることができた.この成果は,当初の予定を大幅に上回っている.
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Strategy for Future Research Activity |
化学生態学的解析では,今後はGCを用いた解析により見出すことのできた兵隊特異的な化合物が何かを更に解析していくことになる.そのためにはGCによる分析のみならず,MSを使った構造推定を行う必要があるので,それを行っていく. 分子生物学的解析では,スクリーニングによって得られたいくつかの候補遺伝子について,リアルタイム定量PCRによる発現パターンのconfirmationを行っていくことになる.また,その後はRNAiなどを用いた機能解析へとシフトしていく.
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Research Products
(6 results)