2012 Fiscal Year Annual Research Report
知的障害者家族におけるきょうだいのケア概念-ジェンダー/セクシュアリティの視座
Project/Area Number |
12J03473
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
松本 理沙 同志社大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 障害者のきょうだい / ケア / ジェンダー / セクシュアリティ / ヤングケアラー / セルフヘルプ・グループ / 質的調査 / アメリカのきょうだい支援 |
Research Abstract |
本研究では「きょうだい」(知的障害者を兄弟姉妹に持つ者を「きょうだい」と表記)を1.「ケアの主体」として調査し、2.「ジェンダー/セクシュアリティ」の視座からきょうだいが抱える問題の考察を行ってきた。研究目的は、「障害者-きょうだい-親」の三者構造からきょうだいの実態を明らかにしたうえで、上記1.及び2.を踏まえてきょうだいへの支援策を再考することにあった。 24年度は、先行研究レビューを進めると同時に「きょうだい」に対するインタビュー調査を実施した。質問項目は、障害のある兄弟姉妹/父親/母親/セルフヘルプ・グループや障害者支援施設等の社会資源とのつながり、障害のある兄弟姉妹に対して実際に担ったケアの具体的内容、そのケアに対する思い、等を設定した。 分析の結果、児童期の経験が成人期のケア役割に及ぼす影響、障害者とそのきょうだいの関係性(「互いを成長させる関係」)、非障害者家族にはみられにくい親子関係(「社会に対してともに戦う関係」)等が明らかとなった。 また、児童期の経験に関する分析を発展させ、「Young Carer(ヤングケアラー)」という概念に着目した研究を行ってきた。ヤングケアラーとは、家族のケアや援助、サポートを行なっている18歳未満の子どもで、恒常的に、通常は大人がするとされているレベルの責任を引き受けている者と定義される。分析の結果、ヤングケアラーとしての経験が成人期のケア役割に及ぼす影響や、ヤングケアラーとしてのきょうだいが、障害のある兄弟姉妹と同じ学校で過ごすことによる影響等が明らかとなった。 さらに、アメリカにおいてもきょうだい支援団体の組織化が進んでいること等から、2013年2月下旬から3月中旬にかけて、フィールド調査を行った。具体的には、きょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの関係者からの聴き取り、きょうだいのケア役割に関するインタビュー調査等を実施した。現在、データ分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究目的に即した調査を実施できている点、また、研究を発展させ、アメリカにおいてもフィールド調査を実施できた点から、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、アメリカにおけるフィールド調査は予定していなかった。そのため、アメリカにおける調査で得られたデータを分析する際、研究計画で示した内容に加え、アメリカの文化観や法制度、及びそれらが障害当事者や家族に及ぼす影響についても考察していく必要がある。 さらに、それらと日本における調査の分析データと比較することで、日本におけるきょうだい支援に有効な支援策を考察していく。 また、以上の成果を、研究業績等にどのように反映させていくかも今後の課題である。
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Research Products
(5 results)