2012 Fiscal Year Annual Research Report
24S-hydroxycholesterolによる神経細胞障害メカニズムの解析
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12J03567
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山中 一哲 同志社大学, 大学院・生命医科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 24S-OHC / Necroptosis / Caspase-8 / Lipid droplet / ACAT / エステル化 / RIP1のリン酸化 |
Research Abstract |
神経細胞モデルであるSH-SY5Y細胞において,24S-hydroxycholesterol(24S-OHC)がNecroptosisと呼ばれる細胞死を誘導することが我々の以前の研究から見出されている.アポトーシスの代替経路として知られているNecroptosisが誘導される理由として,両者の切り替えに重要なCaspase-8の発現が神経細胞において低いことが考えられる.24S-OHC誘導性細胞死のメカニズムを探るため,Caspase-8が発現しているJurkat細胞を用いて比較検討を行った.その結果,24S-OHC処理したJurkat細胞ではアポトーシスが誘導され,Caspase阻害剤であるZVADを前処理したJurkat細胞ではNecroptosisが誘導されることが示された.SH-SY5Y細胞における24S-OHC誘導性細胞死の初期段階において,Lipid dropletの形成およびAcyl coen-zyme A:cholesterol acyltransferase(ACAT)依存的な24S-OHCのエステル体形成が誘導されており,これが細胞死において重要であることが明らかとなった.24S-OHC処理したJurkat細胞においてもSH-SY5Y細胞と同様にLipid dropletや24S-OHCのエステル体形成が認められ,これはZVAD前処理の有無に関わらず同程度確認された.ACAT阻害剤による24S-OHC誘導性細胞死に対する抑制効果もZVADの前処理の有無に関わらず確認されたことから,Lipid dropletおよび24S-OHCのエステル体形成は,アポトーシスとNecroptosisの分岐よりも上流で起きていることが明らかとなった.これらの結果から,24S-OHCのようなコレステロール酸化物が関与するNecroptosisに対してACAT阻害剤が有用である可能性が示唆された. また,24S-OHC誘導性細胞死の分子メカニズムを検討するために,活性酸素種(ROS)の関与および小胞体ストレスの関与について検討を行ったが,いずれも24S-OHC誘導性細胞死には寄与していないことが明らかとなった. さらに現在,ADなどの疾患モデル動物においてNecroptosisが誘導されているかどうか検討するために,Neroptosis時に特異的に観察されるReceptor-interacting protein 1(RIP1)のリン酸化を認識する抗体の作成を行っている.現在は作成した抗体がリン酸化RIP1のみを特異的に検出可能か確認を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ADモデルマウスでの検討に関してはリン酸化RIPK1抗体の作成の遅れにより,進行がやや遅れ気味である.一方で,培養細胞系を用いた24S-OHC誘導性細胞死のメカニズムの解析については,Lipid dropletおよび24S-OHCエステル体の形成が重要であり,さらにこれはアポトーシスとNecroptosisの分岐点より上流で起きていることを明らかにした.また,ROSや小胞体ストレスは24S-OHC誘導性細胞死に関与していないことも明らかとなった.これらを総合的に考えて,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
24S-OHC誘導性細胞死においてLipid dropletおよび24S-OHCのエステル体の形成が重要であることが明らかとなっている.今後はLipid dropletの単離を行い,そこに含まれているタンパク質および脂質を網羅的に解析することにより,細胞死に関与するタンパク質や脂質の同定を目指す.さらに明らかになった分子メカニズムを基に,細胞死抑制物質の探索を行い,神経変性疾患モデル動物への適応を行う. また,ADなどの疾患モデル動物においてNecroptosisが誘導されているかどうか検討するために,Neroptosis時に特異的に観察されるRIPK1のリン酸化を認識する抗体の作成を行っている.現段階では,リン酸化に対する特異性やWestern blot法および免疫組織染色への適応について確認を行っている.この特異的な抗体が使用可能になれば,様々な疾患のモデル動物に対して検討を行い,Necroptosisが関与するような疾患を明らかにする.
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