2012 Fiscal Year Annual Research Report
鉄系高温超伝導体における・超伝導対称性・発現機構の理論研究
Project/Area Number |
12J03600
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 哲郎 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 超伝導発現機構 |
Research Abstract |
鉄系超伝導体の発現機構・対称性として、スピン揺らぎによりs_+波超伝導が発現するとするものと軌道揺らぎによりs_<++>.波が発現するとする2つの理論が提案されている。これらを見分けるためには、超伝導ギャップ構造の理論的解明が重要である。したがって、我々は超伝導発現機構のBaFe_2(As,P)_2において、超伝導ギャップ方程式の詳細な解析を行った。クーロン斥力のみを考慮して、RPAを行った場合、スピン揺らぎだけが発達して、s_±波超伝導状態となる。この場合には、z^2軌道のホール面のギャップが小さくなり、その付近にノードが現れた。スピン揺らぎは、軌道内ネスティングとクーロン斥力により発達するが、z^2軌道はホール面のみに存在し、電子面には存在しないために、z^2軌道内のネスティングは存在せず、スピン揺らぎが発達しないためである。この結果はレーザー角度分解光電子分光(ARPES)実験の結果を再現しない。鉄系超伝導体では、アンダードープ領域において、正方晶から斜方晶への構造相転移点T_sよび、ストライプ型の反強磁性転移点T_Nをもつ。構造相転移は軌道秩序、磁性転移は磁気秩序に対応し、温度-ドープ量相図において、この付近に超伝導転移があるため、超伝導は軌道揺らぎ、スピン揺らぎの両方が強い領域において、起こっていると考えられる。このため、クーロン斥力にくわえて、バーテックス補正のAL項や、鉄イオンの格子振動に由来する、四重極相互作用を加えた計算を行うと軌道揺らぎも強くなり、その結果(1)z^2軌道のホール面のギャップが開き、(2)s_±波からs_<++>波へのクロスオーバーが起こる。このクロスオーバーの間では電子面にノードが現れる。このノードは実際に、BaFe_2(As,P)_2に対するARPESにより最近観測されている。このクロスオーバーは不純物をドープすることによっても起こる。したがって、BaFe_2(As,P)_2はこのクロスオーバーの領域にあると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BaFe_2(As,P)_2のノード構造に関しては、理論的説明ができ、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
四重極相互作用の起源としては、鉄イオンの振動のほか、クーロン相互作用のバーテックス補正のAL項の効果が重要であることが最近明らかになった。このため、鉄イオンの振動に基づき四重極相互作用の軌道依存性を見積もる予定であったが、今後はバーテックス補正を取り入れた計算を行う予定である。
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