2013 Fiscal Year Annual Research Report
鉄系高温超伝導体における・超伝導対称性・発現機構の理論研究
Project/Area Number |
12J03600
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 哲郎 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 超伝導発現機構 / 超伝導ギャップ関数 |
Research Abstract |
鉄系超伝導体の発現機構・対称性として、スピン揺らぎによりs_±波超伝導が発現するとするものと軌道揺らぎによりs_<++>波が発現するとする2つの理論が提案されている。これらを見分けるためには、超伝導ギャップ構造の理論的解明が重要である。したがって、我々はLiFeAsにおいて、超伝導ギャップ方程式の詳細な解析を行った。四重極相互作用(g)のみを考慮して軌道揺らぎが発達した場合、このとき、主にxz/yz軌道で構成される小さなホール面のギャップが最も大きくなり、実験を再現する結果が得られた。これは、主に小さなホール面(xz/yz軌道)と電子面(xy軌道)間の軌道間ネスティングを利用して軌道揺らぎが発達するためである。また、電子面についてもARPESで観測されているギャップの異方性を定量的に再現する。一方、クーロン斥力(U)のみを考慮してスピン揺らぎが発達した場合、小さなホール面のギャップが非常に小さくなり、実験と矛盾する。これは、xz/yz軌道内ネスティングが悪いため、xz/yz軌道のスピン揺らぎが発達しないためである。また、電子面のギャップの異方性もARPES実験結果を再現しない。この結果から、LiFeAsでは軌道揺らぎによるS_++波超伝導が発現していることが期待される。最後に、Uもgも大きく軌道、スピン揺らぎともに大きくなる場合についても考えた。この場合には、大きなホール面だけがギャップの符号が反転し、ホール面内でギャップの符号が反転する、「hole-s_±波」が現れる。これは、小さなホール面と電子面間のネスティングにより軌道揺らぎが発達し、この間のギャップの符号が同じになる一方、電子面と大きなホール面では、軌道内ネスティングにより、スピン揺らぎが発達し、この間ではギャップの符号が反転するためである。「hole-s_±波」は様々な鉄系超伝導体で実現している可能性がある。例えば、過剰ドープ(Ba, K)Fe_2As_2において、熱伝導率や磁場侵入長測定によりホール面内で符号が反転することが議論されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
IiFeAsの超伝導発現機構が、軌道ゆらぎであることを提案しただけでなく、スピン揺らぎと軌道揺らぎが両方発達した場合に「hole-s±波」状態という新奇な超伝導ギャップ構造が現れることを理論的に予言した。
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Strategy for Future Research Activity |
LiFeAsのモデルにおいて、「hole-s±波」状態という新奇な超伝導ギャップ構造が現れることを理論的に予想したため、実際に「hole-s±波」状態が現れるとされている、(Ba, K)Fe_2As_2のモデルにおいて、「hole-s±波」状態について研究を行う。
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