2012 Fiscal Year Annual Research Report
後期インド密教におけるタントラの成立と流派形成の研究-ヘーヴァジュラ系を中心に-
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12J03646
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松村 幸彦 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヘーヴァジュラ / ラトナーカラシャーンティ / サロールハヴァジュラ / 観想法 / 三三昧 / 後期インド密教 |
Research Abstract |
本年度は、本研究で中心として採り上げる、サロールハヴァジュラの著した観想法の手引書『ヘーヴァジュラサーダノーパーイカ』及び関連文献の写本の魔集、同文献の批判的な校訂テキストの制定・翻訳に着手した。ゲッティンゲン大学図書館所蔵の『ヘーヴァジュラサーダノーパーイカ』及び、サロールハヴァジュラ著ヘーヴァジュラタントラ註『ヘーヴァジュラティッパニー』の写本については写真データを入手すること出来た。 修士論文では、比較対象とするラトナーカラシャーンティが著した観想法の手引書『ブラマハラ』を採り上げたが、時間的な制約により十分に考察することが出来なかった点もあり、サロールハ・ラトナーカラ両者を比較・検討する為には、時代的に下るラトナーカラシャーンティの説く儀礼やその背後にある思想などについて、より深い理解が先に必要であると気付かされた。よって当初の計画を修正し、本年度はラトナーカラシャーンティの著作を中心に読み進めることとした。そこで、ラトナーカラシャーンティの観想法の体系について明らかにするために、ヘーヴァジュラにおいて『ブラマハラ』と共に重要な著作とされるラトナーカラシャーンティのヘーヴァジュラ註『ムクターヴァリー』を、『秘密集会タントラ』への註釈書である『クスマーンジャリ』と共に読み進めた。『ブラマハラ』では三つの三昧と仏の三身について説かれるが、そこにはそれ以上の記述は見出されない。そのため、三三昧と仏の三身の関係を中心にラトナーカラシャーンティの観想法の体系の理解に努めた。ラトナーカラシャーンティは、後期インド密教・仏教を代表する著名な学僧であり、彼の著作の読解・理解は非常に重要であり、本研究上、非常に意味のあるものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、予定していた写本の鬼集も順調に進んでいる。また、計画を修正し、中心として読み進める文献などを変更したが、それは本研究の最終年度に満足いく成果を上げるために必要不可欠なものであり、むしろ、最終的には当初の計画以上の成果を上げることが出来ると考えている。故に、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在未蒐集の関連文献の写本について、引き続き蒐集に努めると共に、蒐集済みの原典を随時購読し、サロールハヴァジュラの著作の解析を行っていく。その際、24年度に読み進めたラトナーカラシャーンティの儀礼・思想等と照らし合わせつつ行っていく。
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