2012 Fiscal Year Annual Research Report
植物における純粋な二酸化炭素シグナル伝達機構の探索
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12J03688
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
門田 慧奈 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 気孔 / CO_2 / サーモグラフィ |
Research Abstract |
本研究では、環境刺激に対する気孔応答機構の解明に向け、アブシジン酸(ABA)シグナル経路とクロストークしている二酸化炭素(CO_2)シグナル経路から、純粋なCO_2シグナル経路に関わる新規の遺伝子を発見することを目的としている。 平成24年度では、目的とする遺伝子に変異をもつ植物体を選抜するため、サーモグラフィを用いたハイスループットスクリーニングを行った。まずスクリーニングの準備として、環境試験機の動作調整を行った。この試験機は本研究のため新たに開発したものであるが、従来の試験機に比べ精密な環境条件のコントロールを可能にする。動作確認の結果、従来の試験機よりも湿度低下の速度が遅かったため、新たに除湿器を設置することで対策とした。その後本格的にスクリーニングを開始した。このときスクリーニングに用いた植物体は、変異原処理をする前に、目的の変異体を単離する上で邪魔になるABAシグナル応答の影響を排除してあったが、この植物体は野生株に比べて枯れやすく、CO_2応答性も低いため、目的とする変異株候補がとれる割合が低かった。そのため、別のアプローチとして、野生株に変異原処理を施して得たM2植物を用いてスクリーニングを行い、その結果一次選抜において68系統の変異株候補を得ることに成功した。一次選抜で単離した変異株については、二次選抜においてABA定量およびABA応答性解析を行うことで、ABAシグナル経路とは独立した経路に関わる変異株を絞り込む。 また気孔のCO_2シグナル応答研究の一環として、シロイヌナズナエコタイプ集団について、同様の手法によりCO_2応答に違いのあるエコタイプを探索したところ、解析の中でMe-0というエコタイプのCO_2応答性が通常と異なっており、その原因が気孔サイズの拡大にあることを発見した。そこでこのエコタイプの気孔応答性を詳細に解析し、その結果を国際会議にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではABA応答を喪失した変異体に変異原処理を施した植物体をスクリーニングに用いることでABAシグナル経路と独立した遺伝子に変異を持つ植物体を選抜する予定だったが、この方法では目的の変異体候補を得られる割合が予定よりも低いことが判明した。しかしながら、その遅れを取り戻すために、計画していたスクリーニング手法と同時並行で、野生株に変異原処理を施した植物体を用いてスクリーニングを行った結果、平成24年度終了までの段階で68系統の変異体候補を得ることができた。このことから、おおむね研究は順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を進めていく中で、当初の計画であったABA応答を喪失した変異体を用いてのスクリーニング法では変異体候補の得られる数が予定よりも少なく、期間内の目的達成が困難だということが判明した。そこで当初の計画と同時並行で、野生株に変異原処理を施して得たM2植物からCO_2応答性の低い系統を選抜し、その後二次選抜においてABA応答性に異常がないかを確かめるという手法によって、目的とする新規のCO_2シグナル経路関連遺伝子に関わる変異体の単離を行う。その後は当初の計画通り、変異株の原因遺伝子のポジショナルクローニングを行い、原因遺伝子を同定する。さらに原因遺伝子の発現解析や、ドミナントネガティブ形質転換系統などを用いた解析を行い、その生理活性についての分子生物学的考察を行う。
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Research Products
(1 results)