2012 Fiscal Year Annual Research Report
ソフト界面吸着膜におけるドメイン構造とその形成原理を明らかにする研究
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12J03699
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今井 洋輔 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 吸着膜ドメイン / イオンの特異効果 |
Research Abstract |
今回の研究の目的はイオン性界面活性剤水溶液の表面吸着膜中で存在が予想されているドメイン構造を明らかにすることである。昨年度は交付申請書の計画に記載した界面活性剤C_6MBrImIを変更し、対イオンSO_4^<2->と活性剤イオン間の強い静電相互作用によるドメインの形成が予想される硫酸ビスドデシルトリメチルアンモニウム(DTA_2SO_4)を用いることとし、一価のBr^-イオンをもつDTABrとの混合系により二価のSO_4^<2->の吸着膜構造への効果を調べた。表面張力測定、全反射XAFS測定から以下のことを明らかとした。(1)吸着量対濃度曲線から低い溶液濃度ではDTA_2SO_4の方がDTABrより吸着量が高く飽和吸着量はDTABrの方がDTA_2SO_4より高いことが示され、Stern層で一部脱水和を伴うBr-とは対照的にSO_4^<2->は吸着膜中でDTA^+と強く静電相互作用するものの、Stern層においても水和を堅持することが示唆された。(2)溶液組成と表面組成の関係からBr^-とSO_4^<2->は吸着膜中で互いによく混和すること、また低い溶液濃度ではSO_4^<2->はBr^-に比べ界面領域に吸着しやすい傾向があり高い溶液濃度では界面に存在するBr^-の比率が高くなることも示された。(3)水和構造解析から吸着膜中でのBr^-の活性剤イオンへのイオン結合度はDTABr純成分系より混合系で高くなることが示された。今回の研究から対イオンと活性剤イオン間の静電相互作用は疎水鎖間分散力や水和の効果などに比べ長距離的であることからDTA_2SO_4では界面密度の低いところでもドメインが存在する可能性が高いことが示された。自身の以前の研究も含めることで、対イオンの異なるイオン性界面活性剤に関して電荷、水和、水素結合といった対イオンの特異効果の観点から吸着膜ドメインの研究を進展させるための実験系の基盤が整ったことの意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたC_6MBrImIこそ用いていないが、より単純系で考察のしやすいDTA_2SO_4を用いることでその吸着膜の凝集状態に関して表面張力と全反射XAFSから明らかにし、対イオンの異なるイオン性界面活性剤に関して電荷、水和、水素結から生じる対イオンの特異効果(ホフマイスター効果)の観点から吸着膜ドメインの研究をさらに進展させるための実験系の準備を整えたことから。
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Strategy for Future Research Activity |
スウェーデンにあるRoyal Instituteに留学し、自身の持つ実験系DTA_2SO_4、DTAC1、DTABr、DTABF4などの実験系に和周波分光法を適用し、界面活性剤に覆われていないフリー表面の残存率の定量、親水基の水和状態等を調べ、表面張力、全反射XAFSの結果と加えることで、ドメイン構造を明らかにする。得られた描像を元にRoyal InstituteのEriksson教授らと共にドメイン構造を取り入れた吸着理論式の提案を行う。
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