2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J03751
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金澤 輝代士 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非平衡統計力学 / 揺らぎのエネルギー論 / 微小熱力学 / 非ガウスノイズ |
Research Abstract |
近年, 光ピンセットを代表に微小系の操作技術が目覚ましく発展している. それに応じて微小系に熱力学的性質を議論することが盛んに行われている. 微小系に熱力学の枠組みを拡張する理論の1つが揺らぎのエネルギー論である. 従来の揺らぎのエネルギー論の枠組みでは, 主に熱揺らぎに駆動される微小系が想定されていた. 熱揺らぎは典型的にはガウスノイズとして記述されることが知られている. それに対して, 非熱的な揺らぎが見える系では非ガウスノイズが現れる事がある. 例えば, 非平衡状態にある電気回路系や生物系では, それぞれ, アヴァランシェノイズやアクティブノイズといった非ガウスノイズを受ける. 本研究ではこれらの系の非平衡な特徴を熱力学の観点から研究する. 本研究の当該年度の実施状況は以下のようになっている. まず, 非熱的ノイズを用いたエネルギーポンプを考えた. 具体的には, コンデンサーとアヴァランシェダイオードを用いた電気回路を考える. ダイオードに強い電圧を加えると, アヴァランシェノイズという間欠なノイズが生じる. このノイズの特徴は実験的に非ガウス性が強いことが知られている. ここで, コンデンサーを操作することで取り出せる仕事を議論する. 結果, アヴァランシェノイズから準静的過程・有限時間操作過程でそれぞれ正の仕事とパワーを取り出せることがわかった. この内容は論文にまとめられ, 現在Phys. Rev. Eに投稿中である. 次に, 非熱的な揺らぎが非ガウスノイズでモデリングされる根拠を微視的な視点から示した. 具体的には, van Kampenの導入したシステムサイズ展開を, 熱的環境と非熱的環境が共存する系に拡張を行った. 結果, 非熱的揺らぎが散逸に関わらない場合, 非ガウス性が顕在化し, 非ガウスランジュバン方程式が導出されることが分かった. この論法を用いて, 粘性がある粉体モーターのブラウン運動を議論した. 結果, 非熱的揺らぎの非ガウス性から非熱的環境のミクロな情報が取り出せることがわかった. これは非ガウス性を検出することで環境のミクロ自由度の情報を逆推定可能なことを示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に投稿した非熱的環境間のエネルギー輸送の論文が平成25年度のPhys. Rev. Eに掲載された. また, 当該年度に研究した非ガウスノイズでのエネルギーボンブの論文の草稿が完成し, Phys. Rev Eに投稿出来た. また, 非ガウスノイズの起源をミクロから探る研究が成功し, 現在投稿準備中である. これらを受け, 計画は順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
まず, 当該年度で研究した「非ガウスランジュバン方程式の微視的導出」を論文としてまとめて投稿する. また, このフォーマリズムを非線形抵抗の系(e.g., クーロン摩擦)に拡張する. クーロン摩擦を伴う非ガウスランジュバン方程式は, A. Gnoliのグループが粉体モーターを使った実験で既に観測されている. この系が本研究の枠組みとして議論できるかを調べ, 実験的な検証にっいて実際に彼らのグループと議論する. また, 本研究の枠組みを生物系でも利用できることが実験的に示唆されているので, パリ第7大学のF. van Wijland等とともに共同研究を行い, 生物系での非熱的揺らぎの研究を行う.
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