2013 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症児の表情認知と情動処理の過程における特殊な視空間注意の解明
Project/Area Number |
12J03878
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
磯村 朋子 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自閉症スペクトラム / 表情認知 / 情動 |
Research Abstract |
自閉症スペクトラム児における怒り顔の迅速な処理(以下、「怒り顔優位性効果」と呼ぶ)と、その背景にある認知メカニズムを明らかにするため、認知科学的研究を進めている。昨年度は自閉症群と定型発達群の群間比較を行ったが、今年度は各群の中で個人のもつ一般的な認知特徴と怒り顔に対する迅速な処理の間にどのような関係があるのかを調べた。昨年度までに、10歳前後の自閉症児は見かけ上定型発達児と同様に怒り顔優位性効果を示すが、その際の顔の処理様式が群間で異なることが示唆された。定型発達児は探索時に怒り顔を全体的に処理しているのに対し、自閉症児はまゆげや口などの部分特徴に注目しているようだ。では、一体どのようなタイプの自閉症児がそのような傾向をより強く示すのだろうか。個人の示す注意傾向(全体優先または部分優先)を調べる課題としてよく知られるNavon課題と、顔表情の部分特徴(まゆげ、口)のみを呈示した視覚探索課題を実施し、それらの反応時間や成績を関連づけて分析を行った。その結果、一般的な認知特徴としてより部分優先型の注意傾向を示す児童ほど、怒り顔に含まれる部分特徴に対してより強く怒り顔優位性効果を示すことが示唆された。今後、参加人数を増やし、より詳細な分析を行う予定である。本研究により、自閉症者の示す認知特性と情動プロセスの関連が明らかになりつつあり、今後結果がまとまれば自閉症の機序の解明へ重要な知見を提供しうると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、予定されていた実験をほぼ予定通りに行った。また、得られた成果を国内外の学会で発表し、研究成果を発信すると同時に多くのアドバイスを得るとことができた。これまでに得られた結果はすでに複数の論文にまとめられ、国際誌に投稿されており、本年度はおおむね順調に目的を達成できていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も、申請時の計画に沿って研究を進める予定である。来年度は最終年度であるので、これまでに得られた結果をまとめ、総合的にひとつの仮説を提唱することを目指す。また、それらを国内外の学会で発表し、論文にまとめて国際誌に投稿することを目指す。
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Research Products
(3 results)