2012 Fiscal Year Annual Research Report
近代通用字体を視座とした異体字の派生と展開に関する研究
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12J03886
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 真里 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 文字・表記 / 異体字 / 略字 / 字体 / 字種 / 使用頻度 / 近代教育漢字字体資料 / 手書き文書 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近代において手書きの場合に使用されていた異体字(以下、近代通用字体と呼ぶ)を体系的に明らかにすること、及び近代に派生・展開・衰退した字体を対象に異体字の派生・展開・衰退の要因を明らかにすることによって、近代における漢字字体の特徴を示すことである。本年度は以下の3点を行った。 1 近代教育漢字字体資料の整理 近代に作成された資料で、異体字を示す使用である、近代教育漢字字体資料を新たに20資料発掘し、全37資料のそれらの資料の性質を調査した。調査の結果、これらの資料は近代において社会で使用されていた異体字をある程度反映した資料であることが明らかになった。このことは、日本文芸研究会において口頭発表を行い、論文化したものは『国語文字史の研究』13に掲載が決まっている。 2 近代教育漢字字体資料のテキストデータベース化 整理した近代教育漢字字体資料のテキストデータベースを完成させた。そして、このテキストデータベースをもとに字種によってクラスター分析を行い、掲載字種が類似する資料群を示した。また各資料群に分類される資料の共通点を見ることで、近代教育漢字字体資料群の特徴を明らかにした。この成果は論文化し、現在雑誌論文に投稿中である。 3 「〓」という字体の展開及び衰退要因の考察 「銭」の異体字である「〓」という字体が展開・衰退した時期を手書きの文書調査によって明らかにし、その盛衰要因を考察した。その結果、「〓」字の盛衰は、「銭」という漢字の使用頻度の増減によること、さらに「銭」の使用頻度の増減は金銭単位「銭」の採用と廃止によって引き起こされたことが明らかになった。このことは日本語学会で口頭発表を行い、現在雑誌論文に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
近代教育漢字字体資料を新たに20資料発掘、整理することができ、さらにテキストデータベースも完成させることもできた。さらに、完成したテキストデータベースを使って近代教育漢字字体資料の分類を行うことで、資料の性格を明らかにした。また、計画していた「銭」の異体字の調査も順調に進み、その成果を口頭発表することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画に沿って研究課題を進める予定である。 具体的には、昨年度作成した近代教育漢字字体資料のテキストデータベースを踏まえて、近代教育漢字字体資料の画像データベースの作成を行う。また、近代教育漢字字体資料を使って近代に使用されていた漢字字体の性質を明らかにするための研究を行う。さらに、「銭」の研究を踏まえて、異体字のあり方についての研究も進めるつもりである。
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Research Products
(3 results)