2012 Fiscal Year Annual Research Report
アノソフ流を許容するリンクをもつ代数曲面の孤立特異点及び高次元ルッツツイスト
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12J03907
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
粕谷 直彦 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 接触構造 / 埋め込み / シンプレクティック構造 / 部分多様体 |
Research Abstract |
私は3次元複素空間内のカスプ特異点のリンクはSol多様体上のアノソフ流に付随する正の接触構造と同値であることを修士論文(2011年)において明らかにした。この特異点のリンクは森淳秀氏の考案した5次元ルッツツイストにおいて主要な役割を果たしていた。さらに高次元のルッツツイストの例で局所的に行えるものを見つけることが、この研究の大きな目標であった。そのためには5次元以上の接触多様体の余次元2の接触埋め込み問題を考える必要がある。ところが、この問題は3次元接触多様体についても十分解明されていない問題であった。そこで私は向き付き3次元閉接触多様体の5次元ユークリッド空間への接触埋め込み問題を考え、第1チャーン類が消えていることと5次元ユークリッド空間上の何らかの接触構造への接触埋め込みが存在することは同値であることを示した。別の言い方をすると、第1チャーン類はユークリッド空間への余次元2の接触埋め込みに関する障害であることが分かった。これは位相的な埋め込みに関する障害ではなく、接触埋め込み特有の障害であり、このようなものが発見されたのは初めてのことである。また、これと同じ方針によってシンプレクティック幾何の問題を一つ解決することに成功した。 ただし、こちらは吉安徹氏(東大数理)との共同研究である。その問題とは平行化可能閉多様体を2倍の次元のユークリッド空間上の何らかのシンプレクティック構造に関してLagrange部分多様体として実現する問題である。結論としては7次元でケルヴェア準特性類が1,という場合を除き全ての平行化可能閉多様体はLagrange部分多様体として実現可能である。この問題は長らく球面についてしか解かれていなかった。今回の解決によってユークリッド空間上のシンプレクティック構造の豊富さに関する研究に関する新しい展開も期待されることとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平行化可能多様体のLagrange埋め込み問題及び3次元閉接触多様体の余次元2接触埋め込み問題の解決など、当初予期していなかった成果が得られたことは研究計画以上の進展である。しかし、解決した時期が昨年11月から今年1月にかけてであったため、現在雑誌投稿に向けて論文作成中である。その意味において遅れを取っているので評価を(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
向き付き3次元閉接触多様体の5次元ユークリッド空間への接触埋め込み問題に関して、埋め込み先を標準的接触構造に限定した場合については第1チャーン類が障害であるということ以外ほとんど何も解明されていない。これを解決するためにシンプレクティックキャパシティの接触幾何への応用を考える。 また、7次元ルッツツイストに関しては3次元ヒルベルトモデュラーカスプのリンクの4次元複素空間への埋め込みを考えればよいが、その足掛かりとしてオープンブック分解を求める。その際トーリック幾何の手法を使う。
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Research Products
(1 results)