Research Abstract |
本研究は次の3つの計画から構成されている.計画1:過去のサンゴ礁生態系の復元(最終氷期以降のサンゴ礁試料を用いて,過去のサンゴ礁生態系を復元する.とくに,サンゴ礁生態系の成立維持に関わった重要な生物(以下,鍵種)を発見する.)計画2:現在のサンゴ礁生態系の評価(過去100年間を対象に,地球温暖化と人為影響を受けたサンゴ礁生態系の現状評価を行う.).計画3:将来のサンゴ礁生態系の予測(将来の地球温暖化と人為影響下におけるサンゴ礁生態系の予測を行う.) 計画1の実施状況:沖縄県石垣島を対象とし,サンゴ礁掘削試料を用いて鍵種の解析を行った.そして,北西太平洋におけるサンゴ礁生態系の鍵種発見について,8月に日本第四紀学会で発表した. 計画2の実施状況:サンゴ礁生態系の現状評価を行うために,沖縄県石垣島を対象とし,8月に現地調査を行った.とくに,人為影響の一つである栄養塩流入に注目し,海水および集落からの排水を採水した(伊原間サンゴ礁:24サンプル,真栄里サンゴ礁:8サンプル).また,人為影響の指標として有効となる指標生物を発見するために底生有孔虫に注目し,採水した地点で堆積物採取を行った(伊原間サンゴ礁:64サンプル,真栄里サンゴ礁:48サンプル).現在,琉球大学理学部で解析を進めている.この現地調査に関連して,サンゴ礁地形を簡便に測量するために,新しい音響測深システムを導入し,その評価を行った.その結果,簡便かつ高速でサンゴ礁地形を測量できることが明らかとなった. 計画3の実施状況:沖縄県石垣島を対象とし,将来の地球温暖化影響下におけるサンゴ礁生態系の予測を行った.とくに,地球温暖化影響の一つである台風の巨大化に注目し,現地観測と数値計算よって解析した.その結果,巨大化した台風が来襲すると鍵種が転倒するため,サンゴ礁生態系の成立維持が困難になる可能性が高いことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画1~3で得られた結果が国際誌および国内誌に受理された.とくに,計画3の巨大化した台風に関する研究は,新聞やテレビ,ラジオなどで取り上げられて社会に発信された.さらに,計画2の新しい音響測深システムの評価は,サンゴ礁地形測量の簡便化と高速化をもたらすことが明らかとなったので,今後,この分野の発展を促すきっかけとなった.
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