2012 Fiscal Year Annual Research Report
Epstein-Barrウイルスゲノム複製・転写・粒子形成の場の構造解析
Project/Area Number |
12J04062
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉本 温子 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Epstein-Barrウイルス / ウイルスゲノム複製 / 転写 / 粒子形成 / 溶解感染 / BMRF1 |
Research Abstract |
Epstein-Barrウイルス(EBV)は胃癌、上咽頭癌等と関連を持つヒトがんウイルスである。EBVは溶解感染の際に宿主細胞の核にreplication compartment(RC)を形成する。RCはウイルスゲノム複製・転写・粒子形成の場であり、ウイルス由来の複製蛋白群や宿主細胞のDNA損傷応答に関わる蛋白が集積することがわかっている。申請者はこれまでの研究によって、RC内部にウイルス複製蛋白質であるBMRF1で構成される構造(BMRF1-coreと名付けた)が形成されることを発見した。さらに、EBVウイルスゲノムの大部分は BMRF1-coreの外側で複製されるが、複製されたEBVウイルスゲノムはBMRF1-coreの内部に貯蔵されることから、BMRF1-coreはEBVの溶解感染において重要な役割を担っていることが考えられる。これを踏まえて、本年度は1)EBVの転写の場の同定、2)EBVの粒子形成の場の同定を行った。1)EBVゲノムは転写時期によって前初期遺伝子/初期遺伝子/後期遺伝子に分類され、それぞれ異なる役割を担っている。申請者は遺伝子の種類によって転写の場がBMRF1-coreの外側か内側で異なる可能性を考え、EBVゲノム転写の場の経時的変化を解析した。その結果、EBV初期遺伝子はBMRF1-coreの外側で転写されているのに対し、EBV後期遺伝子はBMRF1-coreの内側で転写されていることが示唆された。2)現在までにEBVのカプシド構成蛋白は6種類、パッケージング関連蛋白は7種類同定されているが、EBV粒子形成の詳しい機序は解明されていない。BMRF1-coreが複製されたEBVゲノムを貯蔵する役割を持っていることから、BMRF1-coreが粒子形成に関与する可能性を考え、粒子形成の場とBMRF1-coreの位置関係を解析した。その結果、カプシド形成はBMRF1-coreの外側で起こり、BMRF1-coreの外側で形成された未成熟のカプシドはBMRF1-coreの内側のDNAが貯蔵されている部位に運ばれ、ウイルスDNAがパッケージングされることが示唆された。本年度に実施した研究の結果によりEBVの溶解感染機構の一端を示すことができた。このことはEBV感染を制御することにつながり、EBVと関連が指摘されている癌の発がん性の制御にもつながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は1)EBVの転写の場の同定、2)EBVの粒子形成の場の同定を行う予定であったが、そのほとんどは達成されている。特に1)についてはJournal of Virologyに学術論文として報告し、受理されている。 また、2)についても近日中に学術雑誌に論文投稿を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
EBV粒子形成の場をより詳細に解析するために、タイムラプス法による生細胞を用いたバイオイメージングを検討する。さらに免疫電顕を用いて粒子形成の場の特定をする。また新規ウイルス粒子形成関連因子を同定する目的で、粒子形成の場にリクルートされるカプシド構成タンパク、パッケージング関連タンパク以外のウイルスタンパクおよび宿主因子を蛍光免疫染色で探索する。候補因子はBACシステムを用いた組み換えウイルスおよびsiRNAを用いて解析を行う。
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