2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミジンコの生殖機構からみた有性生殖と単為生殖の進化
Project/Area Number |
12J04065
|
Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
蛭田 千鶴江 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 単為生殖 / 有性生殖 / 生殖様式 / ミジンコ / マイクロインジェクション / RNAi / 減数分裂 |
Research Abstract |
ミジンコは、環境変化に応じて単為生殖と有性生殖を使い分けている。この2つの生殖様式が卵形成過程のどの段階がどのように異なることで実現するのかを解明することを目的としている。 まず、有性生殖においては減数分裂が起こると考えられるが、受精の時期や場所についても明らかではない。有性生殖様式を解析する基盤となるオスの誘導や交尾についての条件を検討し、また、複数の有性生殖系統のマイクロサテライトマーカーの選定を行い、交配の有無について検証できるようになった。これらの成果については、電子書籍に掲載される(Hiruta et al., in press)。 単為生殖については、第1減数分裂を途中でスキップする減数しない減数分裂が起こることがわかっているが、その細胞学的な特徴を明らかにすべく、分裂装置の構成や挙動を解析した。その結果、中心体のない樽型の分裂装置が観察され、通常の紡錘体とは異なりγチューブリンは中心体のあるはずの両極ではなく紡錘糸上に局在していた。その後、卵割が開始するまでに新規に中心体が形成される。これらの成果は、国際誌に掲載された(Hiruta and Tochinai, 2012)。 さらに、遺伝子の機能解析やトランスジェニック体の作出などに応用可能なマイクロインジェクション法の確立を目指した。産卵直後の胚を親個体の育房から取り出しても正常に発生する培養条件を検討し、続いてRNA干渉法(RNAi)を試みた。ホメオボックスを持つ転写因子で、節足動物では付属肢の遠位部形成に関わるDistal-less(Dll)遺伝子のノックダウンを行った。その結果、近縁種であるオオミジンコと同様に付属肢の遠位部の形成阻害等の表現型が得られ、遺伝子の発現解析等の結果からも、RNAiが機能していることが示された。今後は、確立した手法を国際誌へと投稿し、各生殖様式の分子機構の解明に利用していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の二本柱である有性生殖と単為生殖それぞれの生殖様式について、卵形成過程に注目した解析を行った。有性生殖様式については、卵形成時の減数分裂過程を細胞組織形態学的な手法を用いて記載を進めている。単為生殖様式については、分裂装置の構成要素であるγチューブリンの局在の特徴を明らかにした。また、それぞれの生殖様式の分子機構を明らかにするために用いる、マイクロインジェクション法を確立した。
|
Strategy for Future Research Activity |
有性生殖様式については、引き続き細胞組織形態学的な手法を用いて卵形成過程および受精の記載を進め、国際誌へ投稿する。単為生殖様式については、第1分裂の停止に関わると考えられるMAPK経路の阻害剤等を用いた解析を行い、本来であればスキップされる第1減数分裂が有性生殖のときと同様に完了するのかどうかも検証する。また、各生殖様式の分子機構を解析する基盤として卵巣の体外培養と人工授精を検討しているが現時点において実現が困難である。そのため、新たに確立したマイクロインジェクション法を用いて、(1)生殖細胞形成に関わる遺伝子の機能解析や(2)生殖細胞を蛍光標識するトランスジェニック個体の作製による生殖様式の解析を行っていく予定である。
|
Research Products
(3 results)