2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04117
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平松 亮 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピントロニクス |
Research Abstract |
本研究では磁壁の工学的デバイス応用と、伝導電子スピンと磁壁との相互作用という磁性体中の電子輸送現象における基礎物理学の理解を目的にしている。本年度は、昨年度に引き続き電流誘起磁壁回転運動によるマイクロ波発振の研究と、新たに磁壁間相互作用を検証する研究を行った。 マイクロ波発振の研究では昨年度、磁壁位置制御のために漏れ磁場を用いる方法を検討し、その成果を報告した。しかし、この方法では単一磁壁しか用いることが出来ず、検出可能な出力を得ることが出来なかった。申請者は、オランダのグループから提案されている集束イオンピーム(FIB)を用いた磁壁の生成及び磁壁回転検出に着目した。FIBを用いることで外部磁場だけで複数の磁壁を生成できるため、総抵抗差が大きくなり、前述の方法よりも大きな出力が得られることが期待できる。研究代表者は昨年度1ヶ月間渡航する機会を頂き、オランダのグループと共同研究を進めてきた。帰日後も共同研究を進め、FIBを用いて複数磁壁を生成する適な条件を見出した。現在研究代表者は、測定用の素子加工、および検出回路の構築を進めている段階にある。 磁壁駆動型のメモリ素子は、省電力、不揮発性、高速動作などの特性があり次世代メモリ素子として有望視されている、このメモリ素子の高記録密度化のためには、磁区を小さくする、すなわち磁壁間の距離を縮める必要がある。強磁性細線にジャロシンスキー・守谷相互作用(DMI)が働く場合、隣接する磁壁内の磁区の向きは反平行となり、隣接する磁壁間に準安定状態が形成されるため、磁壁間距離を縮めても磁壁は消えにくくなる。準安定状態の安定性の指標としてDMIの大きさが重要なパラメータである。研究代表者はマイクロマグネティックシミュレーションを用いて、DMIの大きさと準安定状態の安定性の関係を見積もり、準安定状態の破れる磁場の大きさからDMIの大きさを求める方法を見出した。現在この成果を論文として纏めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的であるマイクロ波発振検出の研究では、集束イオンビームを用いた磁壁生成という昨年度とは異なるアプローチにより、より高出力な素子の作製に成功し、磁壁回転の測定の実証に近づくことができた。また本年度からジャロシンスキー・守谷相互作用の存在する系での磁壁間相互作用を研究しており、マイクロシミュレーションを用いてその関係を明らかにすることができた。したがって、本年度は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、2つの研究を進める。 1つ目は磁壁回転によるマイクロ波発振の実証を行う。共同研究を経て、複数磁壁を同時生成できる素子を作製することができた。今後、異方性磁気抵抗効果を利用した素子構造に加工し、高周波アンプ、スペクトラムアナライザを用いた検出を行う予定である。 2つ目は準安定状態の実証である。昨年度はシミュレーションを用いてDMIの大きさと準安定状態の安定性を明らかにした。今年度は磁場あるいは電流を用いて準安定状態における磁壁間の相互作用を電気的測定、および磁気力顕微鏡を用いた直接観測によって明らかにする。
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Research Products
(5 results)