2013 Fiscal Year Annual Research Report
レーザーアシステッド電子散乱を用いた超高速電子回折法の開発
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12J04164
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森本 裕也 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 気電子回折 / 強光子場科学 / 超高速化学 |
Research Abstract |
本研究課題では、レーザー場内でのみ起こりうる電子散乱過程である、レーザーアシステッド電子散乱過程を利用した超高速気体電子回折法を開発することが目標である。平成25年度は、CCI_4のレーザーアシステッド電子回折像のシミュレーションを行い、平成24年度に得た実験結果と比較をした。シミュレーションでは、当該研究分野で一般的に用いられているK(roll-Watson近似と独立原子モデルに加え、入射電子による分極の効果と化学結合による分子内電子密度分布の変化の効果を取り入れたモデルを考案し、使用した。既報の室温におけるCCI_4の幾何学的構造を用いると、実験で得られた回折像を定量的に再現することが明らかとなり、レーザーが照射された瞬間の分子の幾何学的な構造をレーザーアシステッド電子回折像から決定できることを示す結果を得た。レーザー場と原子・分子が強く相互作用した状態である光ドレスト状態を、レーザーアシステッド電子散乱により観測することも本研究の目標である。理論的な研究により、原子がドレスト状態にある場合、レーザーアシステッド電子散乱の小角散乱成分にピーク構造が現れることが予想されていたため、既存の装置を改良し、観測可能な散乱角度の下限を2.5°から0.1°にした。試料にキセノンを用いて、波長800nm、集光強度1.5TW/cm^2のレーザー場中でのレーザーアシステッド電子散乱過程の観測を行った。その結果、1光子分だけエネルギーが増加した散乱電子の散乱角度分布において散乱角度0.5°以下にピーク構造を観測した。また、実験と並行して、散乱電子を既存のトロイダル型分析器より高効率で観測可能な、角度分解飛行時間型分析器の設計も行った。更に、散乱電子のエネルギー分析器に加えて、レーザー照射や電子衝撃で生成する低速電子を散乱電子と同時に観測するための分析器も設計した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の大きな目標であった、レーザーアシステッド電子回折の初観測を報告する論文を発表することができたため。また、既存の装置を改良することで、レーザーアシステッド電子散乱の散乱角度分布に、光ドレスト状態に由来すると思われるピーク構造を観測したことは、予想を上回る進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に観測した、レーザーアシステッド電子散乱の小角散乱成分に現れたピーク構造が、光ドレスト状態に由来するものであるかどうか、理論計算との比較によって明らかにする。また、平成25年度に設計を行った装置を組み立て、単位時間当たり10倍以上の信号強度で測定を行うことで、レーザーアシステッド電子散乱過程における光ドレスト状態の寄与についてより詳細に調べる。
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Research Products
(4 results)