2012 Fiscal Year Annual Research Report
精密ナノサイズのチューブ蛋白質構築と生体分子認識ツールへの展開
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12J04240
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲葉 央 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バクテリオファージT4 / 人工蛋白質 / 人工金属酵素 / 遺伝子組み換え / 化学修飾 / サイズ制御 / 細胞膜貫通 / 細胞内分子輸送 |
Research Abstract |
1、所属研究室が開発したチューブ蛋白質1βfを用いた新たな人工酵素を開発した(H.Inaba et al., Dalton Trans., 2012)。表面のトレオニン、セリン由来のOH基とシステインに化学修飾したビピリジン配位子をSc3+に配位させることで、触媒活性を持つSc錯体を蛋白質上で構築することに成功した。触媒活性は変異導入したシステインの位置に強く依存し、柔軟性の高い位置で効率的にSc錯体を構築することを明らかとした。水溶液中で触媒反応が可能なことから、今後細胞を構成する分子の修飾反応へと利用可能である。この成果を国際学会で報告し、ポスター賞を受賞した。 2、1βfはアミノ酸の繰り返し配列(VXGXXXXX)4から構成されている。プラスミドDNAにこの配列を導入する事でチューブ長の拡張を試みた。1-32の繰り返し配列を導入した計9種類のプラスミドを作成した。この内。繰り返し配列を2、5、8、16持つ蛋白質の発現及び精製に成功した。より長い8、16の繰り返し配列を持つ蛋白質は、当初得られる量が極めて少ないことに加え、ゲルろ過による精製が困難であったが、それぞれ精製段階における変性剤の添加、超遠心による精製によって克服した。MALDI-TOFMS、DLS、GPC、AFM、TEMによって目的の長さのチューブの構築に成功した。 3、1βfに蛍光色素を化学修飾し、HeLa細胞へ添加した所、細胞質への局在を観測した。エンドサイトーシスの阻害実験を行ったところ、大部分の1βfは非エンドサイトーシス機構で細胞内に取り込まれることが明らかとなった。従って、この蛋白質の形状や高い強度といった構造情報が取り込みに重要な役割を果たしていると推定される。この現象は当初想定していた細胞膜への集積とは異なるものであるが、これまでになかった、負電荷を持つチューブ蛋白質の取り込みという点で大変興味深い。従って研究課題を変更し、取り込みの詳細なメカニズム解析と細胞内への分子輸送を試みている。この成果を学会発表し、ポスター賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2つの学会誌に研究成果を報告したことに加え、多くの国際、国内学会で発表を行い、3つのポスター賞を受賞したことからも、研究を遂行するだけでなく、その意義を外部に発信することができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究を通じて、チューブ蛋白質の細胞内への取り込みという興味深い現象を発見したことから、今後はこの発見を軸とし、取り込みのメカニズム解析、細胞内への分子輸送を試みる。また、UC BerkeleyのProf. Christopher J. Chang研究室と新たな共同研究を開始する。
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