2012 Fiscal Year Annual Research Report
初期胚発生における脱アセチル化酵素Sirt3の役割の解明と新規代謝経路の探索
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12J04251
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 悠美子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 脱アセチル化酵素 / Sirtuin / ミトコンドリア / 初期胚発生 / 腫瘍形成 / 老化 / エネルギー代謝 |
Research Abstract |
本研究は、i)Sirt3の関与する酸化ストレス防御機構とその生理的意義、ii)初期胚のエネルギー代謝調節機構とSirt3との関連、iii)初期胚におけるSirt3機能低下が生後の癌や生活習慣病に関連する疾患発症の基盤に及ぼす影響とその機序について検討し、ほ乳類の卵子形成-受精-着床前胚発生の過程におけるエネルギー代謝調節機構とそれに連動した分子機構、その生後に及ぼしうる影響について解明することを目的としている。 i)Sirt3は初期胚における酸化ストレス防御因子として機能しうる、というこれまでに得た知見をもとに、加齢マウス卵由来の胚発生をSirt3が補助する可能性について過剰発現法を用いて検討し、一定の効果を観察した。ii)Sirt3は周囲の環境に応答して発現量や活性を変化させることから、調節機序の解明を培養細胞を用いて進めると共に、発生段階に応じて代謝状態が変化する初期胚におけるSirt3の発現調節変化についても検討を進めた。iii)腫瘍形成の機序と酸化ストレスとの関連は多く報告されている。そこで、初期胚におけるSirt3の欠損や過剰発現がどのような影響を生後の個体に及ぼすのかを検討するため、ガン抑制因子とSirt3の両遺伝子欠損マウスやCre誘導性Sirt3過剰発現マウスを作成した。両遺伝子欠損マウスに関しては腫瘍の形成率などからSirt3の機能的意義を評価した。作成したマウスは、母体の加齢に伴う卵子の質的変化におけるSirt3の関与およびその分子機序を示す為にも使用する計画である。本研究結果をもとに、実際にヒト胚を用いた応用研究への準備を進めている段階であるが、このように本研究は、初期胚についての理解を深めるという生物学的な意義があるとともに、不妊との関連が指摘される母体の加齢などの要因を克服しつつ、効率よく安全な生殖補助医療への応用が期待される点で臨床的にも社会的にも重要な意味を持つであろうと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sirt3により脱アセチル化される因子の特定が難航している点以外はおおむね順調に進んでいる。一方で、代謝経路の探索に関しては計画時には想定していなかった別の方策での検討が進んでおり、大いに進展が期待できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画に沿って1)初期胚におけるSirt3の脱アセチル化標的タンパク質の探索、2)Sirt3が調節する初期胚に特徴的な未知のエネルギー代謝経路の探索、3)初期胚のSirt3機能に影響を及ぼす母体要因の検討、4)生殖細におけるSirt3機能が卵子形成および受精、初期発生に及ぼす影響の4項目の検討を、24年度に得た実験結果に応じて適宜修正を加えて進めていく方針である。一方で、初期胚におけるSirt3の機能の研究に関してヒトサンプルを用いた研究の実施を具体的に検討しており、本点は計画当初にはなかった新たに加わった点であり、本実験に関しては共同研究の体制で進める予定である。
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Research Products
(4 results)