2013 Fiscal Year Annual Research Report
初期胚発生における脱アセチル化酵素Sirt3の役割の解明と新規代謝経路の探索
Project/Area Number |
12J04251
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 悠美子 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | Sirtuin / 代謝 / 初期胚発生 / 酸化ストレス / ミトコンドリア |
Research Abstract |
(1)初期胚においてSirt3はどのようなエネルギー代謝調節機構に関与するか。 (2)母体要因が初期胚のS血3機能にどのような影響を及ぼすのか。 (3)生殖細胞におけるSirt3の機能変化が卵子形成および受精、初期発生にどのような影響を及ぼすかの三点の解明を目標に研究を行ってきた。その結果について項目ごとに報告する。 (1) Sirt3のプロモーターアッセイを実施し、Sirt3の発現を変化させる配列を2カ所特定し、さらにそこに結合しうる因子の探索をおこない、p53を含む複数の因子を候補として抽出した。 (2) Sirt3mRNAインジェクション法により老化卵子の受精後発生能の改善を達成した。また、卵子の質的低下の原因としてミトコンドリアDNA (mtDNA)の異常が考えられるため、卵子一つからmtDNAの欠失を検出する系を確立した。 (3) Creリコンビナーゼ依存性にSirt3を過剰に発現するマウスを作成し、ノックインアリル由来のSirt3が高いタンパク質発現量と脱アセチル化活性を有していることをSirt3-/-バックグラウンドでSirt3ノックインアリルを持つMEFを作成して確認した。Sirt3過剰発現の効果を検討するため、ZP3-Creとの掛け合わせにより生殖細胞特異的もしくは全身でSirt3を過剰に発現するマウスを作出すると共に、p53欠損マウスやSirt3欠損マウスとの掛け合わせを行った。現在、本マウスが生殖細胞の加齢変化に抵抗性を示すのか、腫瘍形成などにどのように働くのか経過観察中である。 当初の年次計画以外に、Sirt3の腫瘍形成における役割に関して大幅に研究が進展をした。p53やSirt3を欠損するMEFゲノムの不安定性には酸化ストレスによる傷害を介した、細胞周期、細胞分裂の異常が一因となっていることを、免疫染色法を用いて検出した。また、酸化ストレスに対するp53欠損と両遺伝欠損マウス細胞の反応性に違いが見られたことから、癌治療の対象としてのSirt3の可能性を各種抗がん剤処理に対する反応性を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生殖細胞でSirt3を過剰に発現するノックインマウスが順調に作出でき、当該マウスの加齢変化を待たねばならない状況ではあるが、26年度中には決着が付けられる見込みがたった。また、新規代謝経路の探索はまだ進展していないが、代わりに腫瘍細胞におけるSirt3の機能に関して新規性の高い知見を得られつつあり、その結果は代謝経路の探索にも発展しうると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
母体の加齢変化に対するSirt3の役割に関して、Sirt3過剰発現マウスの加齢変化を排卵数、受精、初期胚発生能、生存胎仔獲得率などから評価し、これまでのSirt3インジェクションによるレスキュー実験などの結果と総合して、論文に発表する。また、腫瘍形成におけるSirt3の関与に関する研究に関しても、腫瘍研究の専門家との共同研究を行い助言のもと、必要なデータをとり、26年度中にまとめる予定である。この腫瘍との関連の研究から得られた知見を、初期胚発生期における新規代謝経路の探索の研究にフィードバックしたいと考えている。
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Research Products
(3 results)