2013 Fiscal Year Annual Research Report
生物輸送管ネットワークの適応過程に着想したネットワーク最適化
Project/Area Number |
12J04255
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡邊 晋 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員DC2
|
Keywords | 真正粘菌 / 電力ネットワーク / 最適化 |
Research Abstract |
本研究では原始的な生物である真正粘菌変形体(以下、粘菌と呼ぶ)から着想を得た粘菌アルゴリズムを応用して、電力ネットワークのように需要量と供給量が変動する条件での最適ネットワーク設計を目的とする。前年度の研究では、粘菌アルゴリズムにより得られた小規模ネットワークのパラメータ依存性について、ネットワークのトポロジーと評価関数(電力損失、コスト、脆弱性)を中心に議論した。そして、このパラメータ依存性について、単純なネットワークを対象にして線形安定性解析と吸引域計算により数理的解析を行った。今年度は、需要量一定の条件において粘菌アルゴリズムを適用したネットワーク設計やネットワークトポロジーに依存した電力損失の計算を行い、粘菌アルゴリズムを用いた需要量変動条件下でのネットワーク設計の利点を示した。 今年度は新たに中・大規模ネットワークの設計にも着手した。一般的な配電ネットワークを想定したモデルを対象にして粘菌アルゴリズムを応用したネットワーク設計を行った。これまでの研究ではランダムメッシュなネットワークを初期状態として変電所と需要家を繋ぐネットワーク形態を計算していた。しかし、対象モデルでは座標データが与えられていないため、変電所と各需要家を結ぶネットワーク形態を計算することができない。そこで、配電網に設置された開閉器のON/OFF状態を粘菌アルゴリズムにより決定することで、電力損失最小となるネットワーク設計を目指した。配電網を設計する際には三つの制約条件(樹状制約、電圧降下制約、線路容量制約)を満たす必要がある。粘菌アルゴリズムの成長パラメータμを大きな値(μ>1)に設定して計算することで樹状制約を満たす設計は可能となった。今後、電圧降下制約、線路容量制約を克服することが出来れば、粘菌アルゴリズムが実際の配電網設計に応用可能であることを示せる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
需要量一定条件の導入やネットワークトポロジーに依存した電力損失の計算により粘菌アルゴリズムを用いた需要量変動条件下でのネットワーク設計の利点を示すことができた。しかし、中・大規模ネットワークにおける電力網設計は着手するに留まり、制約条件の克服することができず解析が十分に進められなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は配電網における制約条件を考慮した上で粘菌アルゴリズムを応用した配電ネットワーク設計を行う。課題として電圧降下制約、線路容量制約の克服が残っている。電圧降下制約については需要家における電圧を予め固定して計算することで解決を試みる。線路容量制約については成長関数を変更することで解決を試みる。粘菌アルゴリズムの特性上、上記の対応策で十分には解決できない場合も想定される。その場合は粘菌アルゴリズムを用いたネットワーク設計を複数回行った後、得られたネットワークの中から制約条件を満たすもののみを抽出することでアルゴリズムの評価を行う。
|
Research Products
(3 results)