2013 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍悪性化を制御するJNKシグナルスイッチ機構の解明
Project/Area Number |
12J04291
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎本 将人 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2012 – 2014-03-31
|
Keywords | JNKシグナル / Rasシグナル / Hippo経路 / 腫瘍形成悪性化機構 / F-actin |
Research Abstract |
本年度は、JNKシグナルによるYkiの抑制機構を解析した結果、JNKシグナルは、Hippo経路の構成分子であるWarts(Wts)を活性化してYkiを抑制していることを明らかにした。これらの結果から、がん原性変異を生じた細胞内において、JNKシグナルはWtsを介してYki活性を抑制し腫瘍形成・促進を負に制御していることが明らかになった。一方で、JNKシグナルとRasシグナルの協調的な腫瘍形成・悪性化機構を解析した結果、Rasシグナルが活性化した細胞において、JNKシグナルは過剰なアクチンフィラメント(F-actin)の集積を引き起こすことがわかった。そして、この異常集積したF-actinがJNKによるWtsの活性化を解除しYkiの活性化を誘導することを明らかにした。さらに、JNKシグナルとRasシグナルは、LIMドメインファミリーであるAjubaを介してF-actinの集積を引き起こすことを見出している。これらの解析から、JNKシグナルはWtsを介したYki活性を抑制する"増殖抑制シグナル"として機能し、一方でRasシグナルが活性化している細胞内環境では、JNKシグナルはRas-MAPKシグナルと協調し、F-actinの集積を介してYkiを活性化する"増殖促進シグナル"に変換されることが明らかになった(Enomoto, et al., ; 論文投稿準備中)。これらの研究成果は、多細胞生物において数多く報告されているJNKシグナル依存的な細胞増殖および細胞死のスイッチ機構やJNKシグナルによる腫瘍形成・悪性化機構を生体レベルで明らかにしている点で極めて重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究によりJNKシグナルの腫瘍形成を正負に制御している分子機構を明らかにしていることから、研究目的である腫瘍形成・悪性化を制御するJNKのシグナルスイッチ機構については大部分が明らかになりつつある。今後、JNKシグナルとRasシグナルによるAjubaの制御機構とF-actinにより活性化したYkiとJNKシグナルによる協調的な腫瘍悪性化機構の解明により、本研究の目的であるJNKシグナルが制御する腫瘍悪性化機構の全容が解明される。これらのことから当初の計画以上に順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、JNKシグナルとRasシグナルによるAjubaの制御機構を遺伝学的手法と生化学的手法を駆使して、免疫組織染色、ウエスタンブロットなどでAjubaの細胞内局在、安定性や転写発現を解析し明らかにする。一方、Rasシグナルが活性化細胞におけるJNKシグナルとYkiの協調的な腫瘍悪性化機構を遺伝学的手法で解析する。まずは、各々のシグナル経路の標的分子に着目し、それの関与を解析すると共に染色体の一部が欠損したDeficiency系統を用いた遺伝学的スクリーニングにより腫瘍悪性化を抑制する遣伝子群を網羅的に探索し、研究目的である腫瘍悪性化を制御するJNKシグナルスイッチ機構の全容解明を目指す。
|
Research Products
(2 results)