2013 Fiscal Year Annual Research Report
侵入樹種Tamarix ramosissimaの窒素利用の解明
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12J04309
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今田 省吾 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 窒素循環 / 窒素利用 / 侵入樹種 / 乾燥地 |
Research Abstract |
本研究は、アメリカ合衆国西部乾燥地域の河畔林の侵入樹種Tamarixi amosissimaの窒素利用の解明を目的としている。本年度は、①Tamarix林内の土壌の窒素循環および②Tamnarix林分の窒素利用に関する調査研究を進めた。①土壌の窒素循環に関する調査に関しては、昨年度に引き続き、アメリカ・ネバダ州バージン川下流域のTamarix林内と林外に設置した調査区で、土壌の無機態窒素濃度、純窒素循環速度、微生物呼吸速度を測定し、季節変化を調査した。その結果、林内では、硝酸態窒素濃度が昨年の測定値よりも増加する傾向がみられた。一方で、林外でこのような傾向は認められなかった。本調査地では、2011年から生物学的防除昆虫による葉食害の影響によってTamarix林の早期落葉現象が観察されている。そのため、Tamarix林での硝酸態窒素濃度の増加は、早期落葉により展葉期間が短縮され植物の養分吸収量が低下したこと、リター流入量の増加に伴い土壌での硝化量が増加したこと、あるいはその両方が原因と考えられた。また、Tamarix林内土壌のアンモニア態窒素濃度、純窒素循環速度、及び微生物呼吸速度に季節・年ごとの変化は認められなかった。②Tamarix林分の窒素利用の調査に関しては、河岸からの距離の異なる調査区において葉およびリターを採取し、葉の窒素濃度および窒素安定同位体比を測定した。その結果、河岸からの距離に応じて葉の窒素濃度および窒素安定同位体比の変化は認められなかったものの、昨年の測定値と比較して窒素濃度がやや低く、調査区間で値の変動が大きい傾向がみられた。生物学的防除昆虫によって強度の食害の影響を受けたTamarixの葉の窒素濃度は健全個体の葉と比べて低下する。それゆえ、生物学的防除昆虫による食害の二年目に、Tamarixの葉が食害の影響をより強く受けることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
土壌の窒素循環調査に関しては、本年度に予定していたTamarix林土壌の窒素無機化速度および硝化速度の調査に加え、土壌の窒素循環を担う微生物の機能解明に関わる分子生物学的実験に取りくんだ。林の窒素利用調査に関しては、葉、リター及び土壌試料の収集を行った。アメリカでの野外調査後は、日本で試料の分析を進めている。全体的には、おおむね順調に研究は進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は主にアメリカで採取した試料の解析を進める。また、本年度計画しているTamarix ramosissima及びPopulus fremontii苗木の窒素利用効率調査を行う予定である。これまでに得られた結果を取りまとめ、投稿論文を作成する予定である。
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Research Products
(1 results)