2012 Fiscal Year Annual Research Report
植物無細胞翻訳システムを用いたRNAウイルスのキャップ構造非依存的翻訳機構の解明
Project/Area Number |
12J04362
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田島 由理 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | キャップ構造非依存的翻訳 / 試験管内翻訳系 / 植物RNAウイルス / シロイヌナズナ / ダイアンソウイルス / 分節ゲノム |
Research Abstract |
ウイルスはリボソームや翻訳開始因子など翻訳に必要な因子を宿主のmRNAから奪い取り,自らの遺伝子発現に利用する.ウイルスの遺伝子発現制御機構を解明するためには宿主の翻訳機構の知見が必要であるものの,植物細胞における翻訳機構の知見は非常に乏しい. 本研究では,二分節のゲノムRNA(RNA1とRNA2)の両方にキャップ構造とポリA配列を持たない植物ウイルスであるRed clover necrotic mosaic virus(RCNMV)をモデルとして用い,通常の真核生物mRNAとは異なるウイルスのキャップ構造非依存的翻訳機構を解明することを目的とする.本年度はRCNMVのキャップ構造非依存的翻訳に必要な翻訳開始因子の同定を試みた. 1)候補遺伝子のクローニング これまでの研究から,RNA1の翻訳には翻訳開始因子複合体であるelF4Fまたはその植物特異的なアイソタイプであるeIFiso4Fが必要であることが示唆された.そこでシロイヌナズナおよびタバコBY-2細胞からeIF4F,eIFiso4Fを構成する遺伝子のクローニングを行い全長のcDNA配列を得た. 2)RNA1の3'端非翻訳領域(3'UTR)と相互作用する翻訳開始因子の同定 試験管内翻訳系を用いてRNAプルダウン実験を行い,eIF4E,eIF4GおよびeIFiso4GがRNA1の3'UTRと相互作用することを示した. 3)RCNMVの翻訳に必要な翻訳開始因子の同定 種々の翻訳開始因子の遺伝子が欠損したシロイヌナズナ変異体由来のプロトプラストを用いてRNA1およびRNA2の翻訳を調べた.その結果,RNA1の効率よい翻訳にはeIF4Fが,RNA2の効率よい翻訳にはeIFiso4F1がそれぞれ必要であることがわかった.以上の結果から,RCNMVは分節ゲノム間で異なる翻訳開始因子を用いて効率良く翻訳を行うというユニークな特徴を持つことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初はRNA1の翻訳に関わる翻訳開始因子の同定および機能解析を行う予定であった.しかしシロイヌナズナ変異体を用いて解析を行うことにより,RNA1だけでなくRNA2の翻訳に関わる翻訳開始因子を新たに同定することに成功した.また,RNA1とRNA2の翻訳機構を同時に研究することにより,分節ゲノムを持つウイルスがゲノム間で異なる翻訳開始因子を用いて翻訳を行うという興味深い現象を見いだすことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,様々な翻訳開始因子を除いた試験管内翻訳系(タバコBY-2培養細胞もしくはシロイヌナズナMM2d培養細胞由来)と大腸菌で発現させ精製した翻訳開始因子のリコンビナントタンパク質を用い,RCNMVの翻訳に必要な翻訳開始因子を調べる予定である.また,試験管内翻訳系でのアフィニティー精製と質量分析を組み合わせて行うことにより,RNA1の翻訳に必要な翻訳開始因子を新たに同定する予定である.
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Research Products
(4 results)