2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物無細胞翻訳システムを用いたRNAウイルスのキャップ構造非依存的翻訳機構の解明
Project/Area Number |
12J04362
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田島 由理 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | キャップ構造非依存的翻訳 / 試験管内翻訳系 / 植物RNAウイルス / シロイヌナズナ / ダイアンソウイルス / 分節ゲノム |
Research Abstract |
ウイルスはリボソームや翻訳開始因子などの翻訳に必要な因子を宿主のmRNAから奪い取り、自らの遺伝子発現に利用する。ウイルスの遺伝子発現制御機構の解明には宿主の翻訳機構の知見が必要不可欠であるものの、植物細胞での知見は非常に乏しい。 本研究では、二分節のゲノムRNA (RNAtとRNA2)のいずれにもキャップ構造とポリA配列を持たない植物ウイルスであるRed clover necrotic mosaic virus (RCNMV)をモデルとして用い、通常の真核生物mRNAとは異なるウイルスのキャップ構造非依存的翻訳機構を解明することを目的とする。前年度は種々の翻訳開始因子遺伝子に変異を持つシロイヌナズナを用いた解析を行い、RNA1とRNA2のキャップ構造非依存的翻訳には異なる翻訳開始因子が必要であることが示唆された。本年度は、以下の3つの観点から研究を行った。 1)タバコ培養細胞由来の試験管内翻訳系と翻訳開始因子のリコンビナントタンパク質を用い、試験管内でRNA1とRNA2それぞれの翻訳の再構成を行った。前年度得られた結果と合わせ、RNAIの翻訳にはe1F4Fが、RNA2の翻訳にはelFiso4Fがそれぞれ必要であることが強く示唆された。 2)RNA複製とリンクした翻訳機構の解明に向け、RNA2の翻訳に必要なRNA因子の同定を試みた。種々の変異体RNA2をシロイヌナズナプロトプラストに接種して調べた結果、RNA2の複製には影響せず翻訳のみに影響するRNA因子の同定に成功した。 3)eIF4FあるいはeIFiso4F遺伝子に変異を持つシロイヌナズナ植物体にRCNMVを接種した結果、いずれの変異体でもRCNMVの感染性が低下していた。 以上の結果から、RCNMVは分節ゲノムRNA間で異なる翻訳開始因子を用いて翻訳を行うという他に類を見ない特徴を持つことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、本年度は試験管内翻訳系を用いた解析を行い、RCNMVのそれぞれのゲノムRNAの翻訳に必要な翻訳開始因子を同定できた。また、種々の翻訳開始因子の遺伝子に変異を持つシロイヌナズナ変異体を用いたRCNMVの感染性の調査も問題なく行うことができた。試験管内翻訳系を用いてアフィニティー精製と質量分析を行い、RNA1の翻訳に必要な因子を新たに同定することはできなかったが、そのかわり、当初予定していなかったRNA2の翻訳に必要なRNA因子の絞り込みを行うことができた。 これらの点から、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、試験管内翻訳系あるいはプロトプラストを用いてRNA2と翻訳開始因子の相互作用を調べる。また、RNA1とRNA2のキャップ構造非依存的翻訳に必要な翻訳開始因子の要求性の違いを生む要因を探るため、RCNMV感染プロトプラストをショ糖密度勾配遠心法により分画し、RNAIとRNA2、それぞれの局在を調べる。 そして、それぞれの解析を進めながら、これまでの結果をまとめ、国際誌への投稿を準備する。
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Research Products
(2 results)