2012 Fiscal Year Annual Research Report
イネの花粉形成過程におけるタペート細胞の動態とその役割
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12J04382
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 優一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タペート細胞 / GFP / 分泌 / 細胞壁 |
Research Abstract |
イネのタペート細胞の形成および動態を調べる前段階として,本年度はシロイヌナズナを用いて,タペート細胞の形態およびタペート細胞から分泌されたタンパク質の動態を観察した.タペート細胞特異的なプロモーターによって発現させた,タペート細胞から分泌されるカラーゼの全長とGFPを融合したタンパク質は小胞子の表面に局在した.一方で,分泌シグナルペプチドのみとGFPを融合したタンパク質は,タペート細胞と小胞子の間のアポプラストである葯腔全体に均一に分布していた.このことから,カラーゼの分泌シグナルペプチド以降に葯腔から小胞子表面への移行に重要な配列があることと,タペート細胞から分泌されたタンパク質がすべて小胞子表面に局在するのではないことが示唆された.また,これまでに明らかにしてきた,タペート細胞と花粉母細胞の細胞壁のセルロースが減数分裂に先立って分解される現象について解析を進めた.花粉母細胞・タペート細胞・中間層・内被を欠くspl/nzz変異体では葯のどの細胞のセルロースも分解されなかったが,タペート細胞を欠き,花粉母細胞が余分に形成されるtpd1変異体においては野生型と同様に花粉母細胞のセルロースが分解された.このことから,花粉母細胞が自身のセルロースを分解できることが示唆された.既知のセルラーゼを含むグリコシルヒドロラーゼファミリー9(GH9)の25遺伝子の発現をRT-PCRによって調べた結果,野生型とtpd1変異体の両方の花序で発現しているGH9は13遺伝子あることが分かった.in situ hybridizationによってこのうち1遺伝子は花粉母細胞およびタペート細胞では発現しておらず,葯の発生のより後期で発現していることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにタペート細胞特異的プロモーターおよび分泌シグナルペプチドを最適化することでシロイヌナズナにおいてタペート細胞の観察系を確立でき,次年度にイネへと展開する準備ができた.タペート細胞と花粉母細胞の細胞壁の変化を調べる過程で,in situ hybridizationの実験系を立ち上げて新規の発現パターンを示すセルラーゼを同定することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のシロイヌナズナにおける実験結果を参考に,イネにおいてタペート細胞を生きたまま観察できる系の確立を行う.また,タペート細胞と花粉母細胞の細胞壁の変化について引き続き解析を進めていく.
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