2013 Fiscal Year Annual Research Report
イネの花粉形成過程におけるタペート細胞の動態とその役割
Project/Area Number |
12J04382
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 優一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | タペート細胞 / 花粉母細胞 / 細胞壁 |
Research Abstract |
昨年度までにイネのタペート細胞の形成および動態を調べる前段階として、シロイヌナズナを用いたタペート細胞形成機構の解析を行った。小胞子期のタペート細胞はほとんどセルロース性細胞壁を持たない。タペート細胞はその発生直後にはセルロース性細胞壁を持っているが、花粉母細胞が減数分裂する直前にセルロース性細胞壁をほとんど失うことが分かった。また、セルロース減少は花粉母細胞においてもタペート細胞と同じ時期に起こる。葯の初期発生に関わることが知られているSPL/NZZ遺伝子の下流で細胞壁減少は起こり、タペート細胞の誘導に関わることが知られているTPD-1遺伝子非依存的に花粉母細胞の細胞壁減少が起こる。今年度はこれらの結果を取りまとめて論文発表を行った。またセルロースの分解に関わる細胞壁分解酵素を推定するために、花粉母細胞のRNA-Seq結果をデータベースからダウンロードし、DDBJ Read Annotation PipelineおよびP-GALAXYを用いて既知の細胞壁分解酵素を含む遺伝子群のFPKM値を得た。この結果、花粉母細胞では複数の細胞壁分解酵素が転写されていることが分かった。また昨年度までの結果から細胞壁分解酵素で葯の裂開に関わる可能性がある遺伝子が一つ見つかったため、今年度はこの遺伝子の機能について解析を進めた。この遺伝子を35Sプロモーター下でRNAiによって発現抑制した形質転換体を作製したところ、一部の個体が不稔を示した。これらの個体の雄しべを観察したところ、木来は葯が裂開している時期の花においても葯が裂開していないことが分かった。一方で、ネガティブコントロールの形質転換体は、どの個体も自殖の稔性があった。これらの結果から、この遺伝子産物は葯の裂開を正に制御していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、タペート細胞と花粉母細胞がその形成の極めて初期に細胞壁のセルロースを失うことを論文として発表できた。昨年同定した新規の発現パターンを示す細胞壁分解酵素について、この遺伝子が蔚裂開に関わることを示唆する結果を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
タペート細胞と花粉母細胞の形成初期には、両方の細胞で共通の細胞壁分解因子が発現していると予想し、イネ花粉母細胞のRNA-Seqおよび高発現遺伝子のin situ hybridizationを行う。また、葯裂開に関わる可能性がある細胞壁分解酵素について引き続き解析を進めていく。
|